薬剤師国家試験 第106回 問119 過去問解説

 問 題     

75 歳以上のサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の高齢者 160 名を対象に健康教育を行うとともに、4 つのグループに無作為に分類して筋力トレーニング(筋トレ)、ロイシン高配合の必須アミノ酸のサプリメント摂取(サプリ摂取)を定期的に行いながら追跡調査を行った。

3 ヶ月後、膝関節伸展筋力を指標としてサルコペニアが改善した者と改善しなかった者に分けたところ、以下の表の結果となった。また、3 ヶ月後の膝関節伸展筋力の変動 (%) を調べて図に示した。

サルコペニア及びこの疫学研究に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. サルコペニアは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)と同様に、将来介護が必要となる要因の一つである。
  2. 「健康教育+筋トレ」群よりも「健康教育+サプリ摂取」群の方が、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は小さい。
  3. 「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」群の、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は、約0.76である。
  4. この図から、筋トレよりもサプリ摂取を行う方が、膝関節伸展筋力の改善効果が高いことがわかる。
  5. この疫学研究方法は、コホート研究である。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
サルコペニアとは、「加齢により筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態」です。

選択肢 2 ですが
相対危険度(相対リスク)は「暴露群の発生率÷非暴露群の発生率」です。サルコペニアの「発生」とは、膝関節伸展筋力で言えば「改善しない」と考えられます。「健康教育+筋トレ」の発生率は 33/40 です。「健康教育+サプリ」の発生率は 35/40 です。「健康教育のみ」の発生率は 37/40 です。

まず、「健康教育+筋トレ」群の、「健康教育のみ」群に対する相対危険度を計算します。33/40 ÷ 37/40 = 33/37 です。一方、「健康教育+サプリ」群の、「健康教育のみ」群に対する相対危険度は 35/40 ÷ 37/40 = 35/37 です。従って、「健康教育+サプリ」群の方が相対危険度は「大きい」とわかります。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
28/40 ÷ 37/40 = 28/37 です。
28/37 ≒ 27/36 = 3/4 = 0.75 です。従って、約 0.76 は妥当と考えられます。

選択肢 4 ですが
図から、健康教育のみと比べて有意差があったのは、「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」のみとわかります。従って、「健康教育+筋トレ」と「健康教育+サプリ摂取」は、共に「健康教育のみ」と比べて、統計的に違いがあるとは言うことはできません。そのため、「筋トレよりもサプリ摂取を行う方がよい」と、この図から言うことはできないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
コホート研究とは、要因・対照研究とも呼ばれる、ある要因に暴露した集団と暴露していない集団を一定期間追跡することにより、ある疾病にかかる率に差が出るかどうかを調べる研究です。前向き研究の一種です。本問の疫学研究方法は集団を無作為に分類した上で複数の群に分けた研究なので「ランダム化比較試験」です。コホート研究よりもさらにエビデンスレベルの高い研究方法となります。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。
参考 衛生薬学まとめ 要因・対照研究(コホート研究)、相対危険度、寄与危険度 

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