問 題
反応1、2に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、化合物CとFは、それぞれの反応における主生成物とする。
- 出発物質AとDは室温で平衡関係にある。
- 化合物Bはラセミ体である。
- 化合物Cと生成物Fは互いにジアステレオマーの関係にある。
- 化合物Cの立体を含むIUPAC名は(2R,3R)-ブタン-2,3-ジオールである。
- 中間体Eは環状構造をもつ。
解 説
反応1について、化合物Aはアルケンなので、これに過酸(R-COOOH)を反応させるとエポキシド(三員環のエーテル)が生成します。このエポキシドが化合物Bです。
反応機構は以下の通りで、環を生成するためには必然的にsyn付加ということになります。antiの向きだと、その距離が遠すぎて3員環が形成されません。
また、過酸が近づく方向が画面手前からと奥からの2パターンあるため、生成する化合物Bは(2S,3S)体と(2R,3R)体のラセミ体になります。
化合物Bに酸触媒を作用させると、開裂反応が起こりジオールが生成します。このジオールが化合物Cです。これを反応機構で表すと、次のようになります。
上図を見ると(2S,3S)体のエポキシドからは(2R,3S)体のジオールが、(2R,3R)体のエポキシドからは(2S,3R)体のジオールが生成したように見えます。しかし、2つのエポキシドは回転(上下反転)によって全く同じ構造となるため、これらはメソ体であり、同じ化合物であることがわかります。
反応2は1,2-ジオール(1,2-diol)化です。アルケンに四酸化オスミウムを反応させると、二重結合が切れ、2つのヒドロキシル基が付きます。この反応は以下のような形で進行するため、syn付加となります。
以上を踏まえて選択肢を見ていきます。
(1)で、AとDはシス-トランス異性体です。これらは異なる物質なので、通常、室温で異性化するようなことはありません。よって、「室温で平衡関係にある」が誤りとなります。
(2)は上記で解説済みですが、過酸が反応する面によって化合物Bは(2S,3S)体にも(2R,3R)体にもなります。その割合は理論上50%ずつなので、これはラセミ体といえます。よって、(2)は正しいです。
(3)で、上図で示した通り、化合物Cと化合物Fはいずれもメソ体のジオールです。つまり、CとFはジアステレオマーではなく、全く同じ物質となります。よって(3)は誤りです。
(4)で、化合物Cの立体はS体とR体が1つずつなので、「(2R,3R)」は明確に誤りです。よって(4)は誤りです。正しいIUPAC名は次の3つのようになります。これら3つなら、どれを書いても正しい表記といえます。
- (2R,3S)-ブタン-2,3-ジオール
- (2S,3R)-ブタン-2,3-ジオール
- meso-ブタン-2,3-ジオール
(5)で、中間体Eは上図の通りOsを含む五員環となります。よって、(5)は正しいです。
以上から、正解は 2 と 5 です。
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