薬剤師国家試験 第105回 問310-313 過去問解説

 問 題     

46歳男性。2年前に甲状腺全摘手術を受けた後、レボチロキシンナトリウム錠内服による薬物治療を行っている。通院間隔が6ヶ月に一度に変更になり、180日分の処方箋を持って来局した。

この患者の薬剤服用歴を確認すると、過去に服用忘れや、自己判断で服用を中断していた可能性が疑われた。長期処方への変更に伴い、薬剤師が服薬アドヒアランスに関連した注意事項を説明することになった。

問310

この処方薬の服用を中断することによって起こりうるものとして、薬剤師が説明すべき症状はどれか。2つ選べ。

  1. 徐脈
  2. 収縮期血圧上昇
  3. 冷感
  4. 発汗過多
  5. 体重減少

問311

近隣に専門クリニックが開院したこともあり、甲状腺治療薬の長期処方が増加している。一方で、この患者のように、継続治療が必要なのに、服用を忘れたり、勝手に中断する患者が多い。

そこで、長期処方の患者に対して、薬剤師が電話によるフォローアップを行うことで、患者の服薬アドヒアランスの改善又は症状悪化の早期発見につながるかを検討することにした。

この漠然とした臨床疑問を解決可能な臨床研究にするために、まずはPECO(注)又はPICO(注)を使って疑問を構造化することにした。この研究のPECO又はPICOの組合せとして、適切なのはどれか。1つ選べ。

(注) PECOやPICOは疑問を構造化するための手法の1つ。PはPatient、EはExposure、IはIntervention、CはComparison、OはOutcomeの頭文字のこと。

問312

作成したPECO又はPICOに従って、実際に介入研究を行うことになった。この研究を実施するにあたり薬剤師が注意すべき点として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 対象患者を二群に分けた比較試験を行う場合、群分けは患者の希望を優先する。
  2. 研究を開始する前に、あらかじめ倫理審査の手続きを行う必要がある。
  3. 研究資金が必要な場合、利益相反の開示をしないことを条件に製薬会社から提供を受ける。
  4. 対象患者に対して研究内容を文書で説明すれば、参加同意を取得する必要はない。
  5. 研究参加は自由意思によるもので、参加しなくても不利益にならないことを患者に説明する。

問313

この介入研究において、レボチロキシンナトリウム錠の服薬アドヒアランスを評価する方法として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 薬剤服用歴から、調剤した薬剤種類数を調べる。
  2. 患者に持参してもらった残薬数から服薬率を算出する。
  3. 患者から飲み忘れの有無を聞き取る。
  4. 処方した医師に処方意図を確認する。
  5. 併用薬との相互作用の有無を調べる。

 

 

 

 

 

正解.
問310:1, 3
問311:2
問312:2, 5
問313:2, 3

 解 説     

問310

レボチロキシンナトリウムを中断すると、甲状腺機能低下症の症状が現れます。脈拍はゆっくりになり、代謝が下がり、熱産生が減少します。選択肢を見ると「徐脈」「冷感」が妥当と考えられます。

以上より、正解は 1,3 です。

問311

患者は「甲状腺治療薬長期処方の患者」です。「服薬アドヒアランスの悪い患者」では漠然としすぎています。正解は 1 ~ 3 です。

C が Comparison:比較 なので、比較するのは「電話フォローアップ実施なし」と考えられます。

以上より、正解は 2 です。

問312

選択肢 1 ですが
電話フォローアップを希望するか否かという患者の希望を優先して対象患者を分けると、そもそもの服薬遵守意識の高さがあるからフォローアップを希望し、その結果として服薬アドヒアランス向上が見られるのかもしれません。希望するかしないかがランダムであり、かつ、電話フォローアップの有無によってどう結果が変わるか というデザインが望ましいと考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。

選択肢 3 ですが
製薬会社から資金提供を受けたのであれば、利益相反の開示が必要と考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
十分な説明、理解の上での参加同意が必要です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。

以上より、正解は 2,5 です。

問313

選択肢 1 ですが
調剤した薬剤「種類」がわかっても、服薬アドヒアランスの評価はできません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2,3 は妥当な記述です。
180錠 調剤し、1 日1錠服用で、6ヶ月後に残薬が 18 であれば、90% 服薬といった形で算出できます。また定期的に「飲み忘れはありましたか?」と聞いても、評価することができます。

選択肢 4,5 ですが
処方意図を確認したり、相互作用の有無を確認しても、きっちり飲んでいるかという服薬アドヒアランスの評価はできません。よって、選択肢 4,5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

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