薬剤師国家試験 第105回 問304-305 過去問解説

 問 題     

70歳女性。糖尿病の既往歴はない。非小細胞肺がん(扁平上皮がん、PD-L1発現率15%)と診断され、ニボルマブ点滴静注240mg、2週間毎の投与が開始された。

経過良好だったが、6回目の投与後、自宅で強い倦怠感、食欲低下、口渇と多尿が出現し、水分摂取も困難であったため、緊急受診した。受診時、朝食をとらずに行った検査値は以下の通りである。

検査値:Na 135mEq/L、Cl 96mEq/L、K 5.4mEq/L、BUN 23mg/dL、HbA1c 6.0%(NGSP値)、血糖値 571mg/dL、血液pH 7.1、尿糖 4+、尿ケトン 3+

問304

この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. Tリンパ球の機能が低下している。
  2. 血中C-ペプチドが低値である。
  3. 次回以降のニボルマブの投与を中止すべきである。
  4. インフュージョンリアクションが起きている。
  5. 2型糖尿病を発症している。

問305

この患者に実施されるべき治療の目的と薬物治療の組合せとして適切なのはどれか。2つ選べ。

  •    目的           薬物治療
  1. 高血糖改善       速効型インスリンを持続投与
  2. 脱水補正        生理食塩液を点滴投与
  3. アシドーシス補正    ガベキサートメシル酸塩を点滴投与
  4. 高ナトリウム血症改善  5%ブドウ糖を点滴投与
  5. 電解質バランス改善   炭酸水素ナトリウムを点滴投与

 

 

 

 

 

正解.
問304:2, 3
問305:1, 2

 解 説     

問304

ニボルマブ(オプシーボ)は、ヒト PD-1 に対するヒト型 IgG4 モノクローナル抗体です。オプジーボは、T 細胞表面の PD-1 と がん細胞の PD-1 リガンド(PD-L1 および PD-L2)との結合を阻害します。これにより、がん細胞により不応答となっていた抗原特異的 T 細胞を回復・活性化させ、抗腫瘍効果を示します。免疫活性化による代表的な副作用として、大腸炎や 1 型糖尿病、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)などが知られています。(104-258)

選択肢 1 ですが
T リンパ球の機能は活性化されています。低下ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
Ⅰ型糖尿病において、低値を示します。インスリンを作る時に出てくるペプチドなので、インスリン合成が低下すると低値になります。

選択肢 3 は妥当な記述です。
Ⅰ型糖尿病が疑われた場合には投与を中止し、インスリン製剤の投与等の適切な処置を行います。

選択肢 4 ですが
インフュージョンリアクションとは、薬剤投与中~投与開始後 24 時間以内に現れる症状の総称です。アレルギー様症状、発熱・炎症などです。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
Ⅰ型です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

問305

選択肢 1,2 は妥当な記述です。
脱水補正は高血糖改善にもつながります。

選択肢 3 ですが
ガベキサートはタンパク質分解酵素阻害薬です。膵炎治療薬です。この患者に実施されるべきではないと考えられます。

選択肢 4 ですが
Na の値は高値ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
検査値における電解質、Na,Cl,K についてはわずかにどれも基準値から外れていますが、特にバランスが悪いわけではありません。優先すべきは高血糖改善です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,2 です。

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