薬剤師国家試験 第105回 問288-289 過去問解説

 問 題     

28歳女性。日頃から月経による出血量が多く、痛みも強い。食事は炭水化物中心で不規則だった。3ヶ月前から階段を上がるときに息切れを感じていたが、運動不足と寝不足が原因と考え、放置していた。2週間前より動悸、息切れ、めまいなどの自覚症状が増強した。

かかりつけ医を受診したところ、顔面や眼瞼結膜の蒼白などの他覚症状が認められ、血液検査でヘモグロビン値 7.2g/dL、赤血球数 260万/μLであった。下記の薬剤が処方され来局した。

薬局の薬剤師は患者から、膝の外傷部の化膿に対して整形外科からセフジトレンピボキシル錠と耐性乳酸菌製剤が処方され、数日前から服用中であることを聴取した。

問288

薬剤師の患者への対応として正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 鉄剤は耐性乳酸菌の効果を低下させるので、服用時刻をずらすよう説明する。
  2. 肉類や緑黄色野菜の摂取を心がけるよう勧める。
  3. 鉄剤の服用を開始してもすぐには症状が改善しないが、服用を続けるよう説明する。
  4. 鉄剤をお茶で服用すると、鉄の吸収が過剰になることを説明する。
  5. クエン酸第一鉄ナトリウムはセフジトレンピボキシルの吸収を低下させるので、服用時刻をずらすよう説明する。

問289

薬物治療によってヘモグロビン値が11.6g/dL、赤血球数が390万/μLとなった。改善が期待できる臨床所見として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 点状出血
  2. 歩行障害
  3. スプーン状爪
  4. 舌炎
  5. 脾腫

 

 

 

 

 

正解.
問288:2, 3
問289:3, 4

 解 説     

問288

ヘモグロビン値が低く(基準値 女性 約12 ~ 14 g/dL)、赤血球値も低く(基準値 約 380 万 ~ 500 万)、蒼白なども見られ、貧血と考えられます。

選択肢 1 ですが
鉄剤は乳酸菌の効果を下げません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
鉄分豊富な食材です。

選択肢 3 は妥当な記述です。
鉄剤を開始すると、まず血中の鉄分が補充され、症状が目安として2,3週間で改善します。その後、貯蔵鉄が補充されます。そのため、症状改善がみられても貯蔵鉄が正常化するまで服用継続するよう指導が必要です。具体的には貧血改善後、4~6ヶ月程鉄剤を継続服用する必要があります。

選択肢 4 ですが
鉄剤とお茶の併用は、かつては吸収を抑制するとされていましたが、特に問題ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
セフジトレンピボキシルは、鉄剤との併用による相互作用は特にありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

問289

赤血球数、ヘモグロビン値が回復してきています。

選択肢 1 ですが
点状出血は、再生不良性貧血などに、まま見られる症状です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
歩行障害は見られていません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 は妥当な記述です。
これらは鉄欠乏性貧血によく見られる症状です。

選択肢 5 ですが
脾腫は、溶血性貧血に、まま見られる症状です。選択肢 5 は誤りです。

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