薬剤師国家試験 第105回 問270-271 過去問解説

 問 題     

58歳男性。体重60kg。生体腎移植を受けるため入院した。持病である胃潰瘍、高コレステロール血症及び三叉神経痛の治療のため、以下の薬剤を服用している。

この患者に対し、手術前にタクロリムス12mgに相当するタクロリムス水和物徐放性カプセルを経口単回投与した。タクロリムスの血中濃度を数回測定し、解析したところ、血中濃度時間曲線下面積が720ng・h/mLとなり、これは母集団平均値の約2倍であった。

問270

病棟担当薬剤師は、術後の投与量設定を医師と打ち合わせるため、タクロリムスの血中濃度が高値となった原因を探索した。原因として可能性が高いのはどれか。1つ選べ。

  1. CYP2C19の変異型遺伝子をホモで有している
  2. CYP3A5の変異型遺伝子をホモで有している
  3. ラベプラゾールナトリウム錠の併用
  4. ピタバスタチンカルシウム口腔内崩壊錠の併用
  5. カルバマゼピン錠の併用

問271

術後、タクロリムス水和物徐放性カプセルを経口投与し、定常状態におけるタクロリムスの平均血中濃度を10ng/mLとしたい。この患者に対するタクロリムスの1日投与量(mg/day)として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

ただし、この患者におけるタクロリムスの全身クリアランス及びバイオアベイラビリティは腎移植前後で変化しないものとする。

  1. 1.0
  2. 2.0
  3. 4.0
  4. 6.0
  5. 8.0

 

 

 

 

 

正解.
問270:2
問271:3

 解 説     

問270

選択肢 1 ですが
CYP 2C19 変異と血中濃度の関係として知られているのは「オメプラゾール」です。よって、選択肢 1 は誤りと考えられます。

選択肢 2 は妥当な記述です。

選択肢 3 ですが
ラベプラゾールはタクロリムスの添付文書によれば併用に問題ありません。CYP 2C19、及びCYP 3A4 の関与は知られているのですが、非酵素的代謝を受けるため、CYP の変異による影響が少ない PPI です。よって、可能性はありますが、高いかというと妥当ではないと考えられます。

選択肢 4 ですが
スタチンとの併用は問題ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
カルバマゼピンは、CYP 3A4 を誘導します。よって、血中濃度をむしろ低くする方向です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 と考えられます。

問271

「定常状態における平均血中濃度 Css」ときたので、まずは Css = D/CL を思い出します。

問題文から D として 12 mg の時の AUC が与えられているので、CL = D/AUC を思い出します。

まず、CL を出すと
CL = 12 (mg)/720(ng・h/mL) です。
「m」g → 10-3 g、「n」g → 10-9 g とすれば

CL = 12 × 10-3/720 × 10-9
= 10-3/60 × 10-9
= 10-3/6 × 10-8
= 1/6 × 105 (mL/h) です。

1日あたりになおすために、24 かければ
CL = 4 × 105 (mL/day) です。

Css = D/CL なので
10 × 10-9 = D/(4 × 105)となります。

満たす D は、選択肢を参考にすれば
4.0 × 10-3 g とわかります。つまり 4.0 mg/day です。

以上より、正解は 3 です。

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