105回薬剤師国家試験 問254-255解説

 問 題     

55歳男性。10年前に高血圧を指摘され、5年前からニフェジピン徐放錠を服用している。血圧は良好にコントロールされていたが、最近は軽い胸痛を感じることがあった。

1週間前、出勤で階段を上っているときに胸部激痛と背部痛が出現し、冷や汗と呼吸困難、意識障害も生じたため救急搬送された。

冠動脈造影検査にて左前下行枝の高度狭窄が認められ、心筋梗塞と診断された。直ちにカテーテル治療により薬剤溶出ステントが留置された。

身体所見:体温 36.3℃、血圧 145/90mmHg、脈拍 75回/分、呼吸数 15回/分

現在、以下の処方薬による治療を受けている。

しかし、血圧コントロール不良のため、降圧薬の追加について医師より薬剤師に相談があった。

問254

追加が推奨される心筋梗塞後に用いられる薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. アムロジピンベシル酸塩
  2. メトプロロール酒石酸塩
  3. プラゾシン塩酸塩
  4. エナラプリルマレイン酸塩
  5. ヒドララジン塩酸塩

問255

前問で推奨された薬物の1つ(薬物Aとする)を追加して治療を行っていたが、狭心症発作を起こした。そこでジルチアゼムが追加処方されたが、徐脈が起きたため、ジルチアゼムとの相互作用を疑い薬物Aを中止した。中止した薬物Aの作用として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. ブラジキニン分解抑制
  2. 心筋L型Ca2チャネル遮断
  3. 血管平滑筋アドレナリンα1受容体遮断
  4. 血管平滑筋可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化
  5. 心筋アドレナリンβ1受容体遮断

 

 

 

 

 

正解.
問254:2, 4
問255:5

 解 説     

問254

選択肢 1 ですが
Ca 拮抗薬である ニフェジピン服用で血圧コントロール不良なので、別の作用機序の降圧薬が適切と考えられます。アムロジピンは、ニフェジピンと同じ Ca 拮抗薬の一種です。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
メトプロロールは、β 遮断薬です。心臓を休めることによる保護も期待できる降圧薬として、心筋梗塞後の降圧コントロール不良における追加薬物として適切と考えられます。

選択肢 3 ですが
プラゾシンは、α 遮断薬です。ACE 阻害薬等の、心保護機能も期待できる降圧薬と比較すると、追加推奨ではないと考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。
エナラプリルは ACE 阻害薬です。心保護機能も期待でき、心筋梗塞後の降圧コントロール不良における追加薬物として適切と考えられます。

選択肢 5 ですが
ヒドララジンは血管拡張薬です。反射性交感神経亢進により、心臓の仕事量が増加し、症状を悪化させるおそれがあるため、心筋梗塞等の虚血性心疾患に対して使用禁忌です。

以上より、問 254 の正解は 2,4 です。

問255

ジルチアゼムは Ca 拮抗薬です。心筋細胞の Ca2+チャネルを遮断することで心機能を抑制します。(104-154)

メトプロロールによる β 遮断により、こちらも心臓を休めます。これらの相互作用により、心機能が抑制されすぎた結果の徐脈と考えられます。

以上より、問 255 の正解は 5 です。

コメント