薬剤師国家試験 第105回 問196-197 過去問解説

　問 題　　　　　

65歳男性。週3回の血液透析が施行されており、処方1の薬剤を服用していた。

今回の検査において、eGFR 15mL/min/1.73m²、血中リン濃度 5.5mg/dL、補正血中カルシウム濃度 9.0mg/dL、血清アルブミン濃度 3.7g/dL、ヘモグロビン値 12.0g/dL、血清フェリチン値 150ng/mLという結果であった。

また、患者から胃部不快感の訴えもあり処方2に変更となった。

問196

処方2及びこの患者への生活指導に関する説明のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1. リンの吸収を抑えるお薬です。
2. 腎性貧血にも効果があるお薬です。
3. 鉄が含まれますが、便が黒くなることはありません。
4. 食品添加物を多く含むハムやソーセージの摂りすぎには注意が必要です。
5. 果物や生野菜を多く摂るようにしてください。

問197

処方2の薬剤は、酸化水酸化鉄(FeO(OH))が主成分である。酸化水酸化鉄は水酸化鉄(Ⅲ)(Fe(OH)₃)から水(H₂O)が脱離したものである。酸化水酸化鉄及び水酸化鉄(Ⅲ)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 純水中における水酸化鉄(Ⅲ)の溶解度積は、その濃度に依存して変化する。
2. 純水中における水酸化鉄(Ⅲ)の溶解度積は、溶液の温度によって変化する。
3. 水酸化鉄(Ⅲ)の溶解度は、溶液のpHによって変化しない。
4. 酸化水酸化鉄によるリン酸の吸着にはpHが影響する。
5. 酸化水酸化鉄によるリン酸の吸着に剤形や比表面積は影響しない。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問196

選択肢 1 は妥当な記述です。

選択肢 2 ですが
スクロオキシ水酸化鉄（ピートル）は、高リン血症治療剤です。腎性貧血への効果はありません。鉄剤との混同を狙った選択肢と考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
便が黒くなることがあります。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。
ハムやソーセージには、リン酸塩が使用されるためです。

選択肢 5 ですが
果物や生野菜や K が多く含まれています。腎機能低下しているため、高 K 血症を避けるため、K をあまり摂らないように指導します。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,4 です。

問197

選択肢 1,2 ですが
溶解度積は温度によって決まる定数です。濃度に依存して変化するわけではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。選択肢 2 は妥当な記述です。

選択肢 3 ですが
pH が変化すれば、溶液中の OH- の濃度が変化します。そのため平衡が偏り、溶解度が変化すると考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
吸着であれば、比表面積が関与すると考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,4 です。