薬剤師国家試験 第105回 問188 過去問解説

　問 題　　　　　

75歳男性。15年ほど前から動作がゆっくりになり、立っているときに前かがみの姿勢が目立つようになった。

近医を受診したところ、パーキンソン病と診断され、タリペキソールの投与により症状の改善を認めた。70歳頃より症状が悪化したが、レボドパとカルビドパの配合剤への変更により、症状の改善が得られていた。

最近、この配合剤の薬効の持続時間が短くなり、配合剤の使用回数が増えた。この患者の病態及び薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. この患者に最初に出現した症状を、寡動及び姿勢反射障害という。
2. 症状の悪化は、脳の線条体を起始核とする神経が変性したからである。
3. カルビドパはドパミンの血液脳関門の通過性を上げる。
4. 配合剤の薬効持続時間の短縮は、遺伝子多型による個人差で生じる。
5. 薬効持続時間の短縮に対して、配合剤1回量を減量し、エンタカポンを併用する。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

選択肢 1 は妥当です。
他にも振戦、筋固縮が代表的初期症状です。

選択肢 2 ですが
中脳「黒質」におけるドパミン産生細胞が変性、脱落します。「線条体を起始核とする神経が変性したから」ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
カルビドパは、脱炭酸酵素阻害剤です。抹消におけるレボドパの分解を阻害する目的で配合されています。血液脳関門の通過性を上げるわけではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。（97-210)

選択肢 4 ですが
病状の進行が進むにつれて薬効持続時間が短縮します。遺伝子多型による個人差で生じるわけではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。
エンタカポン（コムタン）は COMT 阻害薬です。COMT は、ドパミン等の代謝酵素です。代謝酵素を阻害することで、ドパミンの効果を増強します。レボドパ製剤と併用します。（104-251)

以上より、正解は 1,5 です。