薬剤師国家試験 第105回 問97 過去問解説

 問 題     

以下の記述は、L-バリン(C5H11NO2)の薄層クロマトグラフィー(TLC)に関するものである。

本品0.10gを水25mLに溶かし、試料溶液とする。試料溶液5μLをTLC用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次に1-ブタノール/水/酢酸(100)混液(3:1:1)を展開溶媒として約10cm展開した後、薄層板を80℃で30分間乾燥する。これに試薬( A )のアセトン溶液(1→50)を均等に噴霧した後、80℃で5分間加熱する。

このクロマトグラフィーに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. このクロマトグラフィーの分離モードはイオン交換である。
  2. 試薬( A )はニンヒドリンである。
  3. L-バリンのスポットは黄色を呈する。
  4. 試料にL-ロイシン(C6H13NO2)が混在するとき、そのRf値はL-バリンのRf値より小さい。
  5. この試験でL-バリンのRf値より大きなRf値を与える不純物は、逆相分配クロマトグラフィーにおいては保持時間が一般にL-バリンより大きくなる。

 

 

 

 

 

正解.2, 5

 解 説     

選択肢 1 ですが
「分離モード」とは、HPLC の「分離様式」と考えればよいです。mode:方法、様式、流儀 といった意味です。このクロマトグラフィーは、薄層にスポットし、溶媒で展開なので TLC です。分離様式としては「分配」と考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2,3 ですが
アミノ酸の確認のため「ニンヒドリン反応」が用いられます。この反応により「ルーへマン紫」ができます。黄色ではありません。よって、選択肢 2 は妥当な記述です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4,5 ですが
固定相のシリカゲルは「SiーOH」基がいっぱい出ています。つまり親水性が高いです。混在するロイシンは、バリンと比べて C が 1 つ多いです。「より疎水性」と読み替えます。従って、ロイシンは相対的に「固定相にくっつかない」=「展開されやすい」と考えられます。すると Rf 値は「大きく」なります。

逆相分配クロマトグラフィーとは、移動相が 水 のような極性が高いクロマトグラフィーです。この試験で Rf 値が高い不純物とは、選択肢 4 のロイシンのように疎水性が大きい物質です。すると、移動相の極性が高くなれば「なかなか展開されない」ため、保持時間は「大きくなる」と考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。選択肢 5 は妥当な記述です。

以上より、正解は 2,5 です。

コメント