問 題
58歳男性。健康診断で血圧が高いことを指摘されて近医を受診し、下記の薬剤が処方された。日常的に車を使用し、ほとんど運動の習慣はない。また、長年の喫煙習慣があり、塩辛いものを好む。
服薬指導時に「特に気になる症状もないし、副作用が怖いので、薬は飲まないでおこうと思っている。」と薬剤師に話をしていた。BMIは32、診察室血圧は156/101mmHg、家庭血圧は152/96mmHgであった。
問314
この患者に対する服薬指導を行う際に、薬剤師が知っておくべきこととして正しいのはどれか。1つ選べ。
- 高血圧の診断には、診察室血圧に加え、家庭血圧を測定することが重要だが、両者の値が異なる場合は診察室血圧を優先する。
- 禁煙は精神的ストレスの原因になるので、高血圧患者に対する禁煙指導は避けた方が良い。
- 降圧薬の服用により血圧がうまくコントロールできた場合、生活習慣の改善は必要ない。
- 降圧目標は、年齢や合併症の有無に応じて決められる。
- 減塩目標は、食塩10g/日未満である。
問315
この患者は、「薬を飲まないでおこうと思っている。」という発言からも、行動変容ステージの無関心期(前熟考期)にいると考えられる。この患者を関心期(熟考期)へと促していく働きかけとして適切なのはどれか。2つ選べ。
- 患者の反応にかかわらず一方的に服薬指導や生活指導を行う。
- 健康行動の必要性や有効性について情報を提供する。
- 患者に健康行動実施の宣言をしてもらう。
- 患者の服薬に対する考えや感情(解釈モデル)を聞く。
- 主治医に連絡し、患者を説得してもらう。
正解.
問314:4
問315:2, 4
解 説
問314
さらっと設定されていますが、自分の仕事の存在価値や意義、アプローチの手法、程度等を問われるシチュエーションと感じます。設問とは別個に、このような方に対して、どう、どのような理由で接するかをきちんと言語化しておくのは非常に大切であるような気がします。
選択肢 1 ですが
白衣高血圧などもあるため、家庭血圧が優先されます。
選択肢 2 ですが
禁煙指導は行うべきです。
選択肢 3 ですが
BMI 高値である点から、降圧と並行して生活習慣改善が望まれると考えられます。
選択肢 4 は妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
減塩目標は、1 日 6g 未満が、本試験時点における推奨です。
以上より、問314 の正解は 4 です。
問315
選択肢 1 ですが
一方的に指導をするのではなく、どのようなことならできそうかを自分から考えてもらうというアプローチが一般的に適切です。(いや、とはいえ、ヒトによってはおどろくほど「初めはやらせて効果を自覚させる」が、最初のステップとして効果あるヒトもおりまして、まぁ本当に、正解のない分野だなぁと思います。)
選択肢 2 は妥当な記述です。
選択肢 3 ですが
準備期に適切とされている働きかけです。無関心期に宣言をさせられても「なんか言わされたけど、まぁいいや」という感じになると思われます。
選択肢 4 は妥当な記述です。
「薬を飲まないでおこうと思っている」という発現が、どのような考えから生じているのか、という点について聞きだすことは有用です。人に話しているうちに、自分の考え方の偏りに勝手に気づき、それが行動変容につながることもあります。また、あなたの考え方は理解した上で提案している、という関係の方が、こちらの意図も伝わりやすくなると考えられます。
選択肢 5 ですが
無理やりの説得は、一般的には適切とはいえません。
以上より、問315 の正解は 2,4 です。
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