薬剤師国家試験 第104回 問292-293 過去問解説

 問 題     

35歳男性。身長175cm、体重65kg。最近、急に昼間・夜間を通じて排尿回数が増加し、口渇のため大量飲水するようになったため近医に相談したところ、大学病院を紹介され入院となった。

入院時に患者は頓用で使用しているロペラミド製剤を持参した。入院後に行った検査結果に基づいて、デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠による治療が開始されることになった。

問292

入院時の血液検査結果として考えられるのはどれか。1つ選べ。

  1. クレアチニン値の上昇
  2. ヘモグロビンA1c(HbA1c)値の上昇
  3. コレステロール値の上昇
  4. ナトリウム濃度の上昇
  5. カルシウム濃度の上昇

問293

デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠の医薬品インタビューフォームを確認したところ、以下の図が掲載されていた。なお、デスモプレシン普通錠を投与した場合には、エリスロマイシン投与によるAUC、Cmaxの有意な変化は認められなかった。

* デスモプレシン普通錠:デスモプレシン酢酸塩水和物400μgを含有する錠剤

本症例の薬物治療に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠を食後投与から食前投与に変更した場合、投与後に有害事象の発現リスクが上昇する可能性がある。
  2. デスモプレシン酢酸塩水和物口腔内崩壊錠は大量の水で服用を勧める。
  3. ロペラミドの併用により血漿中デスモプレシン濃度が上昇し、薬効が延長する可能性がある。
  4. ロペラミドとデスモプレシンの相互作用はCYP3A4による代謝の阻害により起こると考えられる。

 

 

 

 

 

正解.
問292:4
問293:1, 3

 解 説     

問292

デスモプレシンによる治療が開始なので、中枢性尿崩症と考えられます。尿崩症とは、バソプレシンが足りないため、集合管における水の再吸収が少なくなり、薄い尿が大量に出るという疾病です。そのため体内の水分がどんどん失われ、高ナトリウム血症などが見られるようになります。急激な口渇等が代表的症状です。

これをふまえると、入院時の血液検査結果として考えられるのは「ナトリウム濃度の上昇」です。

以上より、問292 の正解は 4 です。

問293

選択肢 1 は妥当な記述です。
図「デスモプレシン血漿中濃度に与える食事の影響」によれば、空腹時投与の方が、最大血中濃度が 5 倍程度になっています。従って「食後→食前」への変更により、有害事象発現リスク上昇の可能性があると考えられます。

選択肢 2 ですが
「口腔内崩壊錠」、いわゆる「OD錠」なので、水なしで服用可能です。もちろん水で飲んでもかまいませんが「大量の水」で服用を勧める理由はありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。
ロペラミド(ロペミン)の作用により消化管運動抑制の結果、吸収が増加、遅延し、濃度上昇、薬効の延長につながる可能性が考えられます。

選択肢 4 ですが
エリスロマイシンはマクロライド系抗生物質です。CYP3A4 阻害が知られています。エリスロマイシン投与時、AUC、Cmax の有意な変化が認められなかったとあるため、CYP 3A4 代謝の影響はないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、問293 の正解は 1,3 です。

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