問 題
15歳女性。身長150cm、体重29kg。精神的ストレスから最近6ヶ月で10kgの体重減少があり、月経もない。診察の結果、神経性無食欲症(拒食症)と診断された。特に最近3週間はほとんど食事を摂っておらず意識障害を生じたため、両親に伴われ来院し、緊急入院となった。
入院後も食事に強い拒否を示したため、NST(栄養サポートチーム)の管理下で中心静脈栄養法を行うこととなった。
問228
入院直前のこの患者の栄養状態に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。15歳女性の基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)を25とする。
- 基礎代謝量は、同性、同年代の健常人に比べ高い値を示している。
- 身体を構成するタンパク質の分解により生成した糖原性アミノ酸からの糖新生が亢進している。
- 脂肪酸の分解により生成したアセチルCoAからのケトン体の合成が亢進している。
- コレステロールもエネルギー産生に利用されている。
- 体重が40kgに回復した場合、身体活動度を1.5とすると、推定エネルギー必要量は2,000kcal/日となる。
問229
この患者に行う中心静脈栄養法及びその注意事項として、適切でないのはどれか。1つ選べ。
- 投与エネルギー量は、2,000kcal/日から開始する。
- 輸液にビタミンB1を添加する。
- 栄養補給後の血清リン濃度の低下に注意し、低下傾向が見られた場合、速やかにリン酸製剤の投与を実施する。
- 必要に応じて亜鉛などの微量元素の補充を行う。
- 患者の様子を見ながら、経腸あるいは経口での栄養補給に変更していく。
正解.
問228:2, 3
問229:1
解 説
問228
選択肢 1 ですが
体重が大きく減少しており、基礎代謝量は同性、同年代の健常人に比べて「低い」値を示していると考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は妥当な記述です。絶食時の代謝です。
選択肢 4 ですが
コレステロールは細胞膜成分や、ホルモンの材料として用いられます。エネルギー産生に利用されているという記述は適切ではないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
40 kg であれば、まず基礎代謝量が 25 × 40 = 1000 です。身体活動度をかけたものが、推定エネルギー必要量です。1000 × 1.5 = 1500 です。2000 ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、問228 の正解は 2,3 です。
問229
選択肢 1 ですが
慢性的栄養不良状態が継続している患者に、積極的栄養補給を行うと、一連の代謝合併症が引き起こされます。これをリフィーディング症候群と呼びます。これを避けるため、重症では 5kcal/kg/日、通常 10kcal/kg/日 程度からの栄養投与を開始し、様子を見ながら 100 ~ 200 kcal/日ずつ増量していきます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ~ 5 は妥当な記述です。
以上より、問229 の正解は 1 です。
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