問 題
78歳女性。体重45kg。骨粗しょう症、うつ病及び不眠症のため下記の処方薬を服用していた。最近、食欲がなくなり、とても体がだるいとの訴えを聞いた家族が、この女性を通院中の病院に連れて来たところ、そのまま入院となった。
入院時の検査の結果、低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム高値、高張尿が見られた。しかし、脱水症状は無く、腎機能及び副腎皮質機能が正常であり、上記以外の疾患はなかった。その結果、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)と診断された。
診断した医師から薬剤師に薬学的管理について相談があった。
問216
この患者の薬学的管理に関する提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
- アルファカルシドールカプセルの中止
- パロキセチン錠の中止
- ゾピクロン錠の中止
- 塩化ナトリウムの投与
- 積極的な水分摂取
問217
この患者の検査結果で見られた異常の原因として適切なのはどれか。1つ選べ。
- 腎臓の集合管におけるプロテインキナーゼA活性の阻害
- 腎臓の集合管での水分の再吸収の促進
- 腎臓のヘンレループ上行脚におけるNa+/K+/2Cl–共輸送体の阻害
- 腎臓のヘンレループ下行脚での水分の再吸収の促進
- 下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(バソプレシン)分泌の抑制
正解.
問216:2, 4
問217:2
解 説
問216
問217 の解説とまとめて解説します。
問217
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)とはバソプレシン分泌が何らかの原因により多すぎることによる様々な症状です。代表的な症状は「低 Na 血症」です。これは「バソプレシンが多すぎる→尿として水分が出ない→体内の水分量が多い→低 Na 血症」という流れです。
バソプレシンの作用機序は、集合管において、アクアポリンという水を通過させるチャネルを介して、水の透過性を高めるというものです。
高齢者における抗うつ薬などによる副作用の一つとして SIADH は知られています。SIADH が見られた場合は、服薬を中止し、水分制限などで対応します。
以上をふまえると
問216 の正解は 2,4 です。
問217 の正解は 2 です。
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