104回薬剤師国家試験 問169解説

 問 題     

ある薬物60mgをヒトに静脈内投与した後の血中濃度時間曲線下面積(AUC)が2.0mg・hr/Lであった。この薬物の肝クリアランスが2/3に低下したとき、経口投与後のAUCは、肝クリアランス低下前の経口投与後のAUCに対して何倍になるか。最も近い値を1つ選べ。

ただし、この薬物の体内動態は、線形1-コンパートメントモデルに従い、肝代謝のみで消失し、消化管から100%吸収されるものとする。また、肝血流速度は80L/hrとする。

  1. 1.3
  2. 1.5
  3. 1.8
  4. 2.0
  5. 4.0

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

AUC = D/全身CL です。全身CL = D/AUC なので、本問では D = 60mg、AUC = 2.0 mg・h/L を代入すると、全身CL = 30 h/L です。肝代謝のみで消失ということなので、全身CL = 肝CL です。

肝血流速度が与えられているので、肝臓における抽出率を Eh とした時、Eh = CLh/Qh を思い出します。すると、肝クリアランス低下前について、Eh = 30/80 = 3/8 です。消化管から 100% 吸収なので、薬物 60mg を経口投与したとすれば、肝臓で抽出される分を除いた「60 × 5/8mg」 が血中に入るということです。すると、経口投与時の AUC は、AUCpo = D/CL = (60 × 5/8)/30 ・・・(1)と表すことができます。

同様に考えて、「肝クリアランスが 2/3 に低下」、すなわち、「肝クリアランス = 20」になった時は、抽出率が 20/80 = 1/4 です。薬物 60mg を経口投与したとすれば、肝臓で抽出される分を除いた「60 × 3/4 mg」が血中に入ります。

そして、肝クリアランス低下時の、経口投与における AUC は
AUCpo’ = D/CL = (60 ×3/4)/20 ・・・(2)と表すことができます。求めたいのは、(2)が(1)の何倍かということです。

それぞれ、分分数の分母を払う→約分してきれいにすると、(1)が 300/240 = 5/4 、(2)が 180/80 = 9/4 です。従って、1.8 倍とわかります。

以上より、正解は 3 です。
類題 103-173

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