問 題
以下に示す反応において、反応が最も速く進行するR-Brはどれか。1つ選べ。
解 説
この反応では、基質に対して求核剤を作用させ、CH2基のHをRに置換させています。よって、これは求核置換反応(SN反応)です。
SN反応にはSN1反応とSN2反応がありますが、今回は強塩基の求核剤であるCH3CH2O-を使っているのでSN2反応となります(弱い求核剤だとSN1反応になりやすいです)。
ここで選択肢を見ると、RのうちBr基に隣接する部分を見ると、(1)と(2)は二重結合を持つ炭素となっています。
Brが結合しているこの炭素は、上図の反応機構で示している通り、求核攻撃をされる点となります。しかし、二重結合のように電子が豊富な場所に求核攻撃が起きるとは考えづらいです(電子が電子をアタックすることになってしまいます)。
よって、(1)と(2)はともに不適です。
一方の(3)、(4)、(5)はいずれもBr基の隣がsp3炭素なので、求核攻撃の対象となります。ただし、基質と置換基との立体障害が大きい場合にはSN2反応ではなく脱離反応(E2反応)が起こるという点に注意してください。
今回はSN2反応を起こしたいので、小さめの置換基であるほうが有利です。つまり、反応が最も速く進行するR-Brを選ぶ基準は、RのうちBr基に隣接する部分の立体障害が最も小さくなるものを選べばよいということになります。
ここで再度(3)、(4)、(5)の構造を見ると、(4)ではBr基が結合しているCを含めてt-ブチル基となっています。これはかなり立体障害が大きそうです。よって、(4)はSN2反応が起こりにくいと判断できます。
一方で、(3)と(5)はどちらもBr基が結合しているのが-CH2-なので充分なスペースがあるといえます。そのさらに隣には、(3)の場合はフェニル基が、(5)の場合にはt-ブチル基が結合しています。
(3)と(5)の比較として、フェニル基は同一平面上に全ての炭素が配置されているので、その上下は比較的スペースが空いています。t-ブチル基は3つのメチル基が平面ではなく空間的に広がっているため、立体障害が大きくなるといえます。
以上から、(3)のほうが求核攻撃がしやすくなって反応速度も高くなるため、正解は(3)です。
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