薬剤師国家試験 第103回 問284-285 過去問解説

 問 題     

52歳男性。食道がんの手術後に完全静脈栄養による治療を受けていた。ビタミンB1不足による乳酸アシドーシスの疑いでチアミン塩化物塩酸塩を急速静注したが、効果が不十分であったため7%炭酸水素ナトリウム注射液40mLを輸液500mLに混合して点滴投与する予定である。

問284

2種以上の注射剤・輸液剤を混合する際に生じる配合変化について、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. ある特定のイオンの存在で沈殿を生じることがある。
  2. pHの異なる注射剤を混合する場合は、製剤中の主薬の溶解性が低下することがある。
  3. 溶解補助剤を使用した難水溶性の薬剤を含む注射剤は、輸液剤で希釈すれば主薬の析出を回避できる。
  4. コロイドを含む注射剤と電解質輸液を混合すると、コロイドが凝集することがある。
  5. 糖とアミノ酸を含む輸液を混合すると、褐色に着色することがある。

問285

表は、各輸液の成分濃度を示している。炭酸水素ナトリウム注射液との混合で、配合変化が生じる可能性が最も高い輸液剤はどれか。1つ選べ。ただし、電解質の濃度はmEq/L、ブドウ糖の濃度はw/v%である。

 

 

 

 

 

正解.
問284:3
問285:1

 解 説     

問284

ビタミン B1は、ピルビン酸脱水素酵素などの補酵素です。ビタミン Bが欠乏することで、解糖系で生じたピルビン酸の代謝が阻害され、ピルビン酸が蓄積します。この状況に対し、代償的に乳酸脱水素酵素によるピルビン酸の代謝が亢進します。その結果、乳酸が生成されます。乳酸が豊富になることにより乳酸アシドーシスが引き起こされます。

選択肢 1,2,4,5 は、正しい記述です。

選択肢 1 ですが
特定イオンの存在下沈殿の例は、Ca2+ イオン の存在下における、NaHCO3(メイロン)の配合変化です。

選択肢 2 ですが
pH 変化による溶解性低下、沈殿生成の例は、ラシックスと酸性注射剤の配合変化です。

選択肢 4 ですが
コロイドに電解質の混合なので、塩析や凝析が起きうる ということです。

選択肢 5 ですが
褐色に着色するのは、糖とアミノ酸によるメイラード反応です。

選択肢 3 は誤った記述です。
輸液剤で希釈すれば溶液補助剤の濃度が薄くなってしまい主薬が析出してしまう可能性があります。

以上より、正解は 3 です。

問285

前問の選択肢 1 の解説であげたように、Ca2+ イオン存在下において炭酸水素ナトリウムは沈殿を生じます。従って、正解は 1 です。

類題 98-85

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