問 題
22歳女性。統合失調症のため病院の精神科へ通院している。母親が薬局を訪れ、「娘が薬を時々飲み忘れて、症状が安定しないことから、リスペリドン持効性懸濁注射液を注射された。」と薬剤師に伝えた。
また、母親は下記の処方箋を見て、注射剤と同じ薬物が内服薬としても処方されていることに疑問をもち、今後の薬物治療について薬剤師に質問した。
なお、リスペリドン持効性懸濁注射液の添付文書には、次の2つのグラフが掲載されている(一部改変)。
問220
母親に対する薬剤師の説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 症状が重くなったので、持効性懸濁注射液と内服薬を併用しています。
- 持効性懸濁注射液の効果は、投与3週間を過ぎたころから現れることから、それまでは内服薬も服用します。
- 症状が安定するようであれば、今後、注射は2週間毎になります。
- 持効性懸濁注射液の効果が十分でない場合は、本剤を静脈内に投与される場合があります。
問221
統合失調症では、様々な神経伝達物質との関連が示唆されている。神経伝達物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ノルアドレナリンの水酸化によりドパミンが生合成される。
- ドパミンは、酸化的脱アミノ化と水酸基のメチル化により代謝される。
- セロトニンは、フェニルアラニンの水酸化と脱炭酸反応により生合成される。
- グルタミン酸は、アスパラギン酸のアミノ基がオキサロ酢酸に転移されて生合成される。
- グルタミン酸受容体は、イオンチャネル型と代謝調節型に分類される。
正解.
問220:2, 3
問221:2, 5
解 説
問220
リスペリドン持効性懸濁注射とは、商品名 リスパダールコンスタ のことです。臀部筋注によりリスペリドンが徐々に血中に放出されるため、2週間に1度の投与で血中濃度を維持できる製剤です。
ただし、投与し始めて3週間程度は血中濃度が十分に上昇しません。そのため、投与開始から一定時期は経口投与も併用するという特徴があります。以上をふまえ、各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが
「症状が重くなったから」ではなく「血中濃度の調節のため」に併用します。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが
本剤は、臀部筋注に限ります。静脈注射すると、肺等の臓器に微小塞栓を誘発するおそれがあります。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
問221
カテコールアミン系の生合成は、チロシン → レボドパ → ドパミン → ノルエピネフリン(NE) → エピネフリン(E) の順番です。それぞれの過程で、水酸化、脱炭酸、β-水酸化、N-メチル化 されます。
選択肢 1 ですが
「ドパミン」の水酸化により「ノルアドレナリン」が生合成されます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
それぞれ、MAO、COMT によって代謝されます。
選択肢 3 ですが
セロトニンは、トリプトファンから生合成されます。フェニルアラニンからではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
グルタミン酸は、クエン酸回路における重要な中間体の一つである「α-ケトグルタル酸」にアミノ基が転移されることにより生合成されます。「オキサロ酢酸」に転移では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 2,5 です。
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