薬剤師国家試験 第102回 問204-205 過去問解説

 問 題     

75歳男性。体重70kg。脳塞により右半身の麻痺があり、処方1の薬剤を服用していた。その後、嚥下機能が低下し誤嚥性肺炎を起こし入院したが、刻み食を食べることができるまでに回復した。血圧の上昇が認められたため、退院時に処方2が追加され、介護者が以下の処方箋を持って薬局を訪れた。

問204

薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 腸溶錠の粉砕指示があるので処方医に疑義照会をする。
  2. アスピリン腸溶錠は解熱鎮痛を目的として処方されていると説明する。
  3. グレープフルーツジュースは服用時でなければ飲んでも構わないと説明する。
  4. 胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往の有無を確認する。
  5. めまいが現れたら直ちにニフェジピンの服用を中止するように説明する。

問205

腸溶性コーティングを目的とした高分子の模式図として最も適切なのはどれか。1つ選べ。なお、模式図中の官能基については、腸溶化の目的にかなう主要なもののみを示している。また、は高分子鎖を示している。

 

 

 

 

 

正解.
問204:1, 4
問205:3

 解 説     

問204

少し大きめおじいさん、脳梗塞既往あり。誤嚥性肺炎から回復。

選択肢 1 は、正しい選択肢です。
腸溶錠は、胃で溶けないようにコーティングしてあるため、粉砕するとコーティングがなくなってしまいます。

選択肢 2 ですが
アスピリン腸溶錠は低用量アスピリン療法で用いられ、血栓の予防を目的に処方されています。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ニフェジピンが追加になっているので、GFJ は避けるように指導します。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は、正しい記述です。
ランソプラゾール OD 錠 の用量が1日1回 15mg であることから、用法は「再発抑制」であると考えられるため既往の有無を確認します。もしも確認した結果単なる初回の胃潰瘍や逆流性食道炎であれば1日1回 30mg のはずなので疑義照会を行います。

また、消化性潰瘍の既往歴がある場合アスピリン腸溶錠の使用は潰瘍を再発させるおそれがあるので注意が必要です。そのため、やはり消化性潰瘍の既往歴の確認が必要です。

選択肢 5 ですが
ニフェジピンは降圧薬です。めまいが現れた場合、いわゆる起立性低血圧であれば「ゆっくりと立ち上がる」といった対応で症状はやわらぎます。脳梗塞の再発防止のために血圧上昇をおさえることは重要であるため「急に立ち上がったりするとめまいを感じることがあるかもしれませんのでお気をつけください。薬は血圧をおさえるために飲み続けてくださいね。」といった内容での指導が望ましいと考えられます。よって、選択肢 5 は適切ではないと考えられます。

以上より、正解は 1,4 です。

問205

腸溶性コーティング分子といえば、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート や、酢酸フタル酸セルロース です。

フタル酸というのは、ベンゼンにカルボキシル基が2つついた構造をしています。このカルボキシル基が胃内では pH が低く、周りに H+ が多いから-COOH (分子形)、腸内では pH が高くなるので-COO とイオン形になり溶解します。(腸で溶けるから腸溶性)。従って、官能基が COOH であるものを選べば、正解は 3 です。

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