薬剤師国家試験 第102回 問194-195 過去問解説

 問 題     

患者:72歳男性。

既往歴:高血圧で降圧剤を内服。

現病歴:1年ほど前より尿勢の低下、排尿回数の増加がみられ、とくに飲酒後の排尿困難を感じていたが放置していた。その後、数種の一般用医薬品を服用したところ排尿ができなくなり、下腹部膨満感が出現。間欠的に激しい痛みも出現したため、救急車にて来院した。

尿道カテーテルを留置したところ800mLの尿の流出があった。2日間カテーテルを留置後に抜去したところ、自排尿は得られたが前立腺容積も大きく、残尿も多かったため経尿道的前立腺切除術を施行した。前立腺特異抗原(PSA)値は3.9ng/mLであった。

問194

下記の診断・検査のうち、前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に役立つのはどれか。1つ選べ。

  1. 国際前立腺症状スコア
  2. 尿流量測定
  3. 残尿量測定
  4. 前立腺容積
  5. 直腸診

問195

患者に聞いたところ、次の成分を含む一般用医薬品を服用したことがわかった。

  • ジフェンヒドラミン(睡眠改善薬)
  • ファモチジン(胃腸薬)
  • フェキソフェナジン(アレルギー専用鼻炎薬)

これらの一般用医薬品服用後に生じた排尿困難の機序と考えられるのはどれか。1つ選べ。

  1. ヒスタミンH1受容体遮断
  2. ヒスタミンH2受容体遮断
  3. アセチルコリンM3受容体遮断
  4. アドレナリンα1受容体遮断
  5. ロイコトリエンCysLT1受容体遮断

 

 

 

 

 

正解.
問194:5
問195:3

 解 説     

問194

選択肢 1 ですが
IPSS(International Prostate Symptom Score)と略されるスコアです。排尿に関するアンケート形式の検査で、前立腺肥大症の程度の評価用のスコアです。前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に役立つものではありません。

選択肢 2 ですが
尿流量測定は、測定装置に向かい排尿することで、尿の勢い、排尿時間などを測定します。前立腺肥大症などの診断に用いる測定です。前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に役立つものではありません。

選択肢 3 ですが
残尿量は、エコー検査などでわかる膀胱に残っている尿量です。前立腺の肥大に伴い、多くなります。前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に役立つものではありません。

選択肢 4 ですが
前立腺の容積が大きくなるのが前立腺肥大症です。一方、前立腺における悪性腫瘍が増加するのが前立腺がんです。前立腺肥大症と前立腺がんの鑑別に役立つものではありません。

選択肢 5 は、正しい記述です。
前立腺肥大症の場合、肥大はしても感触は変わらず、前立腺がんの場合、硬くてごつごつした感じになり感触の違いで鑑別することができます。

以上より、正解は 5 です。

問195

ジフェンヒドラミンは、第一世代抗ヒスタミン薬です。抗コリン作用(M受容体の遮断)も有するため眠気などの副作用があります。前立腺肥大症に対しては、禁忌です。よって、正解は 3 です。

ちなみに、ファモチジンは、H2 ブロッカーです。フェキソフェナジンは第二世代抗ヒスタミン薬です。抗コリン作用は小さくなっています。

以下補足。国試不要。
この事例ですが、ある春の日にドラッグストアに「お腹の調子がいまいちだからいつも飲んでるガスターちょうだい」と言ってきたおじいさんがいたとして、ガスター 10(第一類医薬品) 購入の時にドラッグストアで薬剤師がいて、併用薬などの確認を怠ってしまうとこのような事例につながりうる ということを実感させられる問題になっていると感じました。

話を伺い「鼻水も出るからさっき何か鼻炎薬と、後少し眠れないから睡眠薬みたいなのも買って飲んでるよ」といった内容を聴取できるか。また、そのような話を聞いた時に「うん、それは飲まないでね。次の病院に行くのはいつ?排尿で違和感があったらすぐお医者さんに連絡するようにね。」といった指導につなげることができるかなど、とても勉強になる問題だと思います。以上補足。

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