102回薬剤師国家試験 問191解説

 問 題     

36歳女性。主婦。最近、左乳房の腫瘤に気付き、病院の乳腺外来を受診した。

身体所見:身長 158cm。体重 50kg。血圧 128/70mmHg。左乳房の触診にて、内上方に1cm大の硬結を触知した。生理周期 28日。

検査所見:尿所見 正常、末梢血検査 異常なし。

生化学的検査・腫瘍マーカー検査:CEA 8.0ng/mL (正常値 5.0ng/mL以下)、エストロゲン感受性 (+)、プロゲステロン受容体 (+)、HER2蛋白 陰性。
CEA;carcinoembryonic antigen
HER2;human epidermal growth factor receptor type 2

検査の結果、外科的手術を行い、その後、薬物治療を行うこととなった。この患者に適応となる薬物はどれか。2つ選べ。

  1. トラスツズマブ
  2. アナストロゾール
  3. タモキシフェンクエン酸塩
  4. フルベストラント
  5. ゴセレリン酢酸塩

 

 

 

 

 

正解.3, 5

 解 説     

選択肢 1 ですが
トラスツズマブは、ヒトがん遺伝子 HER2/neu の遺伝子産物である HER2 タンパクに特異的に結合することで抗がん作用を示す抗がん剤です。本問では、HER 2 タンパク陰性なので適応にはなりません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
アナストロゾールは、アロマターゼ阻害剤です。閉経後乳がんに用いられます。閉経の定義は1年以上生理がないことです。生理周期が 28 日とあるので、閉経していません。従って、適応にはなりません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい記述です。

選択肢 4 ですが
フルベストラント(フェソロデックス)は、閉経後乳がんに適応を持つ、筋注で用いられる製剤です。エストロゲン受容体の分解を促進する という作用機序です。SERD(選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター)の一種です。閉経していないので、適応にはなりません。よって、選択肢 4 は誤りです。※2020.01.04 追記 本ページ下端

選択肢 5 は、正しい記述です。
ゴセレリンは、LH-RH アナログです。性ホルモン放出ホルモンみたいなものだけど、結果的には受容体の脱感作を引き起こして「性ホルモンの分泌抑制」方向に働きます。

以上より、正解は 3,5 です。

※選択肢 4 について、本試験後、適応拡大がありました。
LH-RH アゴニスト投与下の CDK4/6 阻害剤イブランス(一般名:パルボシクリブ)との併用療法において、フルベストラントは閉経前の乳がん患者さんに対して使用できるようになりました。

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