薬剤師国家試験 第101回 問210-211 過去問解説

 問 題     

散剤の主薬の処方量が少ない場合には、賦形剤の添加により、かさを増し、分包誤差を極力少なくすることができる。賦形をする際は、一般的に賦形剤として乳糖やデンプンなどを、主薬によって選択して用いる。

問210

構造式Aで表される乳糖に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. D-グルコフラノースとD-ガラクトフラノースがグリコシド結合している。
  2. 還元糖である。
  3. グルコシダーゼによって、2つの単糖に分解される。
  4. 水に溶かすと異性化し、旋光性を失う。
  5. β(1→4)結合をもつ。

問211

以下のうち、一般的に乳糖を賦形剤として用いるのはどれか。2つ選べ。

  1. アミノフィリン水和物末
  2. イソニアジド末
  3. ヨウ化カリウム末
  4. β-ガラクトシダーゼ散
  5. ロートエキス散

 

 

 

 

 

正解.
問210:2, 5
問211:3, 5

 解 説     

問210

選択肢 1 ですが
フラノースという語尾は、O を含む「五員環」を示します。(フラン から連想できるのではないでしょうか。)A の構造中のそれぞれの環は、O を含む「六員環」です。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は、正しい選択肢です。
乳糖とは、ラクトースのことです。グルコースとガラクトースが結合した二糖類の一種です。二糖類は、スクロースを除き還元性を有します。

選択肢 3 ですが
乳糖(ラクトース)を分解するのは、β-ガラクトシダーゼの一種であるラクターゼです。従って、選択肢 3 は誤りです。

補足)この選択肢については「α-グルコシダーゼ阻害薬」が「ラクターゼ」も阻害する という知識から、ラクターゼも要はグルコシダーゼの一種 →「グルコシダーゼにより分解」は◯では・・・?と考えた人もいるのではないでしょうか。

α-グルコシダーゼはいわゆるマルターゼです。そして「α-グルコシダーゼ阻害薬」は、α-グルコシダーゼ、つまりマルトースだけでなく他の酵素とも結合して阻害します。阻害されるマルトース以外の酵素にもそれぞれ名前がありたとえばラクターゼ(β-ガラクトシダーゼ の一種)も阻害する、というわけです。補足 以上

選択肢 4 ですが
水に溶かすと、アノマー炭素と呼ばれる O - C -OH (構造式の右上部分)部分が、鎖状と環状構造の平衡をとり旋光性が変わります。これを、変旋光と呼びます。旋光性を「失う」わけでは、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は、正しい選択肢です。
α、β という接頭語は、アノマー炭素についている OH に注目して考えます。OH が平面に対して上なら、β です。

次に、α 結合 や、β 結合 とあった場合は、結合部分の O がアノマー炭素を含む側の糖の平面に対して上かどうかで考えます。上なら、β 結合 です。1位は、アノマー炭素の所です。4位は、アノマー炭素のちょうど向かい側の炭素です。

構造 A は、β 結合であり、かつ結合している炭素が、ガラクトースの 1 位とグルコースの 4 位 です。そのため、β 1→4 結合と呼ばれます。

以上より、正解は 2,5 です。

問211

選択肢 1,2 ですが
これらは、乳糖を賦形剤として用いません。配合変化による、含量低下が知られています。よって、選択肢 1,2 は誤りです。

また、選択肢 4 ですが
β-ガラクトシダーゼ散は、乳糖分解酵素製剤です。乳糖不耐により生じる消化不良の改善に用いられます。よって、乳糖を賦形剤として用いるのは不適切であると考えられます。

以上より、正解は 3,5 です。

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