問 題
薬物の組織分布に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 組織移行性の大きい薬物の分布容積は、血漿容積に近い値となる。
- 組織成分との結合が強い薬物の分布容積は、総体液量を超えることがある。
- 薬物の組織分布が平衡に達すると、血漿中と組織中の非結合形分率は等しくなる。
- 組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比が大きい薬物ほど、分布容積は大きい。
- 炎症性疾患時にはα1-酸性糖タンパク質の血漿中濃度が低下し、塩基性薬物の分布容積が増大する。
解 説
分布容積とは、Vd = D/C0 です。(1-コンパートメント。つまり注射したらすべて一瞬で全身へ薬が広がる と仮定。現実的には、静注と仮定。)極端な例を考えるとイメージしやすいので以下、極端な分布を考えます。
1:「薬は、全て血中に残る。組織に分布しない。」全く組織に分布しなかったとしたら、血中に全ての薬があるはずです。この時、血中濃度は、D/血の量(詳しくいうと、血漿の量) です。そして、分布容積はD/(D/血の量) なので「血の量」 と等しくなります。つまり、分布容積が、血の量( 5L 付近)に近い場合「投与した薬は、結局血管にとどまった」というイメージで OK です。
2:「薬が、どんどん組織へ分布。投与した薬は、血中にほとんど残らない。」この場合、血中濃度は、限りなく 0 に近い小さな値です。 0.01 とかにしてみます。すると、分布容積は D/0.01 = 100D とかになります。つまり、分布容積が 100 L とか 1000 L とかだったら「投与した薬は、あっという間に体の組織に分布した」というイメージで OK です。
以上をふまえて、選択肢 1 を検討します。
分布容積が、血漿容積と等しい ということは、投与した薬 D が、血漿にしか分布しなかったという解釈ができます。ということは、組織移行性は、低いです。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
極端な例として、組織との結合がとてつもなく強くて投与した薬のほぼ全てが組織に移行し、結合したとしたら、C0 がとても少なくなるのでどんな大きな値もとれます。よって、総体液量を超えることがあるだろうと考えられます。
選択肢 3 ですが、極端な例として
血漿中でアルブミン(薬物と結合するタンパク質の一種)がたくさんあって、組織内は
アルブミンも、他のタンパク質もあまりない という環境だったとすれば、薬物濃度が平衡に達したとしてもタンパク質と結合していない率である非結合分率は、等しくならないと考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。
血中から、組織に分布するのは「非結合型」です。血中において、より非結合型になるならいっぱい組織に移行する、ということです。よって、分布容積は大きいと考えられます。
選択肢 5 ですが
α1 酸性タンパク質は、感染症などによる炎症時に増えるタンパク質です。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
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