問 題
ヒト細胞における既知遺伝子の発現をPCR(polymerase chain reaction)法により検出するために以下の実験を行った。実験方法と考察に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
【実験】 ヒト細胞から抽出したRNAを用いて、逆転写反応により相補的DNA(cDNA)を合成した。このcDNAを鋳型として、既知遺伝子の部分的塩基配列を増幅する特異的なセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを用いて、定法に従い24、26、29及び33サイクルでのPCR法を行った。
得られた増幅DNA断片をDNA検出試薬を含むアガロースゲル電気泳動法にて分離し、図のような結果(レーン1~4)を得た。なお、レーン番号の順序は、サイクル数の順序とは一致しない。また、各サイクルでのDNA増幅率はほぼ100%であり、上記サイクル数の間では、DNAは指数関数的に増幅された。
- PCRとは、DNAの熱変性→プライマーのアニーリング→DNA鎖の合成・伸長からなる3段階反応を同一の温度下において繰り返すことで、目的DNAを増幅する反応である。
- 本実験で行った逆転写反応では、mRNAの5’末端に相補的な配列をもつプライマーを用いた。
- レーン1~4のDNA断片のうち、レーン1は26サイクルのDNA断片と考えられる。
- 図の結果より、増幅されたDNA断片は正の電荷を帯びていると考察できる。
- 図中のレーン2とレーン3では、両者のDNA量は理論上約16倍異なると考察される。
解 説
選択肢 1 ですが
PCR 実験を思い出すとよいと思います。95→55→72 ℃ と温度が変わっていって、それぞれの温度で「一本鎖になって」、「プライマーくっついて」、「複製して」という役割があります。「同一の温度下で」という部分が誤りです。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
DNA 合成は、5′ → 3′ 方向にしかできません。
んで、核酸が 2 本鎖の時は
5′ ——- 3′
3′ ——- 5′ という位置関係です。
鋳型である RNA が
5′ ——- 3’ として存在するなら、3′ 末端側にプライマーをつけて
5′ ——- 3′
3′– 5′
とすると、5′ → 3′ 方向というのが左方向となるのでうまく DNA 合成が進行します。「5′ 末端」に相補的な配列ではないと考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい選択肢です。
明るさ、太さに注目することで
レーン 4 → 24 サイクル
レーン 1 → 26 サイクル
レーン 3 → 29 サイクル
レーン 2 → 33 サイクル と判断できます。
選択肢 4 ですが
泳動方向が、-から+なので「DNAは、+に引かれていった」→「DNA は、負電荷を帯びている」と判断できます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい選択肢です。
レーン 2 と 3 は、4サイクル違うので、24 = 16 倍増幅していると考えられます。
以上より、正解は 3,5 です。
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