薬剤師国家試験 第101回 問92 過去問解説

 問 題     

分子の分極の度合いは、(電気)双極子モーメントμとして下式のように定量的に表すことができる。

μ=Q・r

Qは電荷、rは電荷間の距離を表す。0.1nm離れた電子1個分の電荷+e、-eの双極子モーメントは、電荷が1.6×10-19(C)であることから1.6×10-29(C・m)となる。

ヨウ化水素HIの双極子モーメントを求めたところ、1.4×10-30(C・m)であった。H-I結合距離を0.16nmとしたとき、HIのイオン性は何%程度と見積もることができるか。最も近い値(%)を1つ選べ。

ただし、H-I間で電子1個分の電荷(+e、-e)がそれぞれの原子上に分離しているとき、HIは100%イオン性を示すものとする。

  1. 1
  2. 5
  3. 10
  4. 20
  5. 40

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

「nm (ナノメートル)」は、 10-9 m ですので、H-I 結合距離は、単位を m にすると 1.6 × 10-10 m と表すことができます。そして、ヨウ化水素 HI の双極子モーメントが 1.4 × 10-30 ですので、μ=Q・r に代入することで、1.4 × 10-30 = Q・1.6 × 10-10  となります。Q を計算するのは少し複雑そうなので、選択肢を以下では活用します。(もちろん、Q を計算して求めてもかまいません。)

選択肢 1 が正解とすると
イオン性 が 1 % です。100 % イオン性を持った時であれば、電荷 +e, -e がそれぞれ H、I に分離している時であるため、電荷は 1.6 × 10-19 (C) であると考えられます。

100 % イオン性 → 電荷が 1.6 × 10-19 ならば、1 % イオン性 → 電荷は 1.6 × 10-21 であると考えられます。(1% = 0.01 より。1.6 × 10-19 × 0.01  = 1.6 × 10-21 であるため。)この数字を双極子モーメントの式に代入してみると

右辺 Q・r  = (1.6 × 10-21) ・(1.6 × 10-10) = 2.56 × 10-31 となります。左辺と一致しないため、誤りです。

次に、選択肢 2 が正解として
イオン性を 5 % と仮定すると、電荷が、8.0 × 10-21 となり、この数字を代入して計算してみると大体 1.4 × 10-30 となります。

以上より、正解は 2 です。

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