問 題
市立病院に勤務する新人薬剤師が、はじめて病棟で患者を担当することになった。
59歳男性。前立腺がんが原発であったが骨に転移し激しい痛みを伴っており、がんに対する化学療法と痛みに対する緩和ケアが必要とされる。そこで、この薬剤師は患者への介入を考えるため、患者のカルテを閲覧した。薬剤師の行動として通常許容されるのはどれか。1つ選べ。
- 患者氏名をイニシャル化し、私的所有のUSBメモリに患者情報を記録し、自宅に持ち帰った。
- 患者の氏名と使用医薬品名をノートに記録し、製薬企業の学術担当者に見せて相談した。
- 他院の友人に依頼して、類似症例のカルテのコピーを入手し、参考にした。
- 大学の図書館で調べものをするので、患者個人情報を持ち出した。
- 薬剤部内の症例検討会で発表するために、カルテに基づく資料を匿名化したうえで作成した。
解 説
患者のプライバシー保護という観点に注意して、各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが
自宅に泥棒が入って USB を失ったとします。患者氏名のイニシャル化では、患者特定のおそれが残っていると考えられます。(患者プライバシー保護の観点から、論文などにはイニシャルを記載しないようになっています。つまり、イニシャル化は、プライバシー保護の観点から不充分と考えられます。)従って、行うべきではない行動です。
選択肢 2 ですが
患者情報が、他人に特定される形で伝わっており、プライバシー保護の観点から、不適切な行動です。
選択肢 3 ですが
カルテのコピーには、個人情報が記載されており、これを入手することは、患者のプライバシーを損ねると考えられます。従って、不適切な行動です。
選択肢 4 ですが
カルテをコピーして、大学の図書館に持って行って調べ物をするといった行動だと考えられます。これは、図書館において、無関係の人に資料を見られるかもしれないことや紛失する可能性を考えると不適切であると考えられます。(必要な部分のみを、個人情報が特定されないように印刷などして、調べ物をすべきであると思われます。)
選択肢 5 は、正しい記述です。
症例検討では、関係者のみが当事者です。また、匿名化されていれば、個人の特定はできません。
以上より、正解は 5 です。
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