薬剤師国家試験 第100回 問294-295 過去問解説

 問 題     

84歳女性。女性の家族が近所の保険薬局に処方せんを持参した。最近になって女性の記銘力低下(物忘れ)が気になり、脳神経外科を受診したとのことであった。医師により軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、今回が初回投薬となった。その処方内容は次の通りであった。

問294

薬剤師が、この処方せんを確認して調剤を行う場合、その対応として最も適切なのはどれか。1つ選べ。なお、ドネペジル塩酸塩錠は、3mg、5mg、10mg錠が製品化されている。

  1. ドネペジル塩酸塩錠は3mgから開始するので、医師に疑義照会した。
  2. ドネペジル塩酸塩錠は5mgが維持量なので、問題はないと判断した。
  3. ドネペジル塩酸塩錠は初回負荷量として10mgを投与するので、医師に疑義照会した。
  4. ドネペジル塩酸塩錠とレバミピド錠の併用は禁忌なので、医師に疑義照会した。
  5. レバミピド錠は中枢神経系の副作用軽減を目的とすることを説明した。

問295

アルツハイマー型認知症の病因・病態として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 脳内コリン作動性神経系の著しい亢進を認める。
  2. 前頭葉を中心として全般的脳萎縮を認める。
  3. アミロイドβオリゴマーが、神経細胞周囲に蓄積する。
  4. 大脳皮質を中心に、老人斑と神経原線維変化を認める。
  5. 中核症状として徘徊がある。

 

 

 

 

 

正解.
問294:1
問295:3, 4

 解 説     

問294

ドネペジルの初回投与量は、3 mg です。目的は、消化器系副作用の発現を抑えることです。有効容量ではないため原則として、1~2週間を超えて使用しないよう注意が必要です。本問症例では、初回投薬にもかかわらずドネペジル 5 mg が投与されています。よって、疑義照会を行うことが適切であると考えられます。

以上より、正解は 1 です。

ちなみにレバミピドは、消化器系副作用軽減を目的として投与されています。

問295

選択肢 1 ですが
アルツハイマー型認知症においては、コリン作動性神経の著しい低下が認められます。亢進では、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
アルツハイマー型認知症では、主に側頭葉(海馬 を含む部位)や頭頂葉を中心に脳萎縮が認められます。前頭葉を中心としてでは、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 は、正しい選択肢です。

選択肢 5 ですが
アルツハイマー型認知症の中核症状は、記憶障害、見当識障害などです。徘徊では、ありません。(ちなみに、見当識障害とは、現在の時刻や、自分の居場所の把握等に関する障害です。)よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3,4 です。

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