問 題
2歳女児。体重10kg。1日数回の全身強直間代性けいれんを発現し、ミオクローヌスてんかんと診断され、バルプロ酸ナトリウムシロップの投与が開始された。
投与開始3ヶ月頃、呼びかけに反応しないなどの意識障害が頻回に見られたため入院加療となり、バルプロ酸の血漿中トラフ濃度と血漿アンモニア窒素値が測定された。
問292
バルプロ酸の血漿中トラフ濃度は60μg/mLであった。測定結果の判断として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- 有効安全濃度域下限の約1/10であった。
- 有効安全濃度域下限の約1/5であった。
- 有効安全濃度域内にある。
- 有効安全濃度域上限の約5倍であった。
- 有効安全濃度域上限の約10倍であった。
問293
この患者の血漿アンモニア窒素値は、180μg/dL(正常値12~66μg/dL)であった。この原因として、最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。
- ミオクローヌス発作にともなう筋障害
- ミオクローヌス発作にともなう低酸素血症
- ミオクローヌス発作にともなう腎血流の低下
- バルプロ酸による肝実質細胞の障害
- バルプロ酸による尿素サイクルの阻害
- バルプロ酸による腸内のウレアーゼの阻害
正解.
問292:3
問293:5
解 説
問292
バルプロ酸の治療域の血中濃度は、てんかん治療ガイドライン 2010 によれば、50 ~ 100 μg/mL です。従って、有効安全濃度域内 にあると考えられます。
以上より、正解は 3 です。
問293
バルプロ酸ナトリウムの副作用として認められる高アンモニア血症の機序については、代謝過程でプロピオン酸、バルプロイル CoA が増加 → 尿素サイクルにおける重要な酵素(カルバミルリン酸合成酵素-Ⅰ)が阻害される、という機序が1つの原因として考えられています。
以上より、正解は 5 と考えられます。
参照) 重篤副作用疾患別対応マニュアル
リンク先は「小児の急性脳症」対応マニュアルです。p11 に関連記述
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