問 題
43歳男性、体重53kg。呼吸器内科に通院中、肺炎を繰り返すようになり、気管支アスペルギルス症と診断され、入院となった。入院時の持参薬は以下のとおりであり、入院中も継続して服用した。
注射用ボリコナゾールを初日に600mg、2日目以降は400mgを1日2回に分けて点滴静注し、投与開始4日目と8日目に血中濃度を測定した。その後、点滴静注からボリコナゾール錠200mgを1回1錠(1日2錠) 1日2回の内用剤に切り換えることになった。
問202
病棟の薬剤師が行うこととして、適切でないのはどれか。1つ選べ。
- ボリコナゾール錠は、現在服用中の他の薬剤と一緒に食後に服用するよう患者に指導した。
- ボリコナゾールを、内用剤に切り換えた後、必要に応じて血中濃度を測定するよう医師に提案した。
- 肝機能検査値の変化に注意するようカルテに記載した。
- 咳がおさまったので、持参薬のうちコデインリン酸塩散の中止を医師に提案した。
- ボリコナゾール錠を服用し忘れたときは、次回にまとめて2錠を服用しないよう患者に指導した。
問203
血漿中ボリコナゾール濃度の定量に際し、下記の除タンパク操作を行った。[ ]に入る最も適切な試薬はどれか。1つ選べ。
「血漿試料に内標準物質、[ ]、および酢酸エチルを加えて振とう・混和し、遠心分離を行って上層の有機層を回収する。溶媒を留去し、液体クロマトグラフィー用移動相に溶解して液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)で分析する」
- 希塩酸
- エタノール
- エチレンジアミン四酢酸(EDTA)水溶液
- 過酸化水素水
- 飽和炭酸水素ナトリウム水溶液
正解.
問202:1
問203:5
解 説
問202
選択肢 1 ですが
ボリコナゾールは、吸収の阻害を避けるため食間服用です。飲み忘れの危険性が高まるため、あえて一緒に飲んでもらうということも考えられますが、薬剤師として推奨する というのは適切ではない、と考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ~ 5 は、正しい選択肢です。
以上より、正解は 1 です。
ちなみに、ボリコナゾールは、血中濃度トラフ値と肝機能障害の関連性が報告されています。高いバイオアベイラビリティを有するため、注射剤から経口への変更を行える薬なのですが内服への変更に伴い、TDM が推奨されています。
ボリコナゾールに関しては他にも、「注射・注入時の一過性視力障害」 について、患者が驚かないように説明しておく必要があります。さらに、光線過敏が起きることがあり日光暴露は避けてもらうよう指導を行います。
問203
酢酸エチルを加えて振とう・混和 した後に遠心分離して有機層を回収している ことからボリコナゾールは、有機層に含まれているということがわかります。
ボリコナゾールの構造に注目すると、N が多く塩基性である、と考えられます。塩基性の物質は溶媒の pH が塩基性であれば、分子形の比率が高くなります。 分子形であれば有機層により移行するはずです。(もしもイオン形が多い状態だと、極性が高いのでやはり極性が高い 水層へ分布するはずだから と考えると、イメージしやすいかもしれません。)
よって「ボリコナゾールが有機層に含まれている」 → ボリコナゾールは分子形で存在していた→ pH は塩基性寄りのはずです。つまり、本問の操作によって pH が塩基性寄りになるはずなので、選択肢の中から pH を塩基に偏らせるものを探すと、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液しかありません。
以上より、正解は 5 であると考えられます。
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