薬剤師国家試験 第100回 問168 過去問解説

 問 題     

肝臓で一部が代謝され、一部は未変化体のまま胆汁排泄される薬物について、その肝クリアランスが低下する要因となり得るのはどれか。2つ選べ。

  1. 心拍出量の増大
  2. 血中タンパク結合の阻害
  3. 肝取り込みの阻害
  4. 肝代謝酵素の誘導
  5. 胆汁排泄の阻害

 

 

 

 

 

正解.3, 5

 解 説     

肝クリアランスは、血流量 Q × 抽出率 Eh  で表されます。これは、覚えている必要はなくて「肝クリアランス=肝臓でどれくらい薬物が除かれるか」 であり、薬物を運んでくるのは血液だから、Q に比例 して肝臓が薬をどれだけ取り除くかが抽出率 と考えれば思い出せるのではないでしょうか。ちなみに「抽出率」は、より具体的に考えると、肝代謝酵素 だったり血中タンパク質との薬物の結合が関与します。それらを含んだ式も見たことがあると思います。

選択肢 1 ですが
心拍出量が増加すると、心臓がバクバク動くので血流量が増加すると考えられます。すると、肝臓へ流れ込む血液量も増加し肝臓へ流れ込む薬物量も増加します。よって、肝クリアランスは増加すると考えられます。低下する要因では、ありません。

イメージとしては、舞台がスーパーなどのお会計で、肝臓を「レジ」、血液を「レジに並ぶ人」、薬を「人が持っているカゴの中身」 、肝クリアランスを「レジで商品バーコードをスキャンした量」 とたとえまして

レジに並ぶ人(=血液量)がどんどん増えてくれてレジがフル回転して、どんどんカゴの中身をスキャンすることができスキャンした商品の量、すなわち肝クリアランスは増加するというイメージです。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
血中タンパク結合の阻害 がおきると、薬物は血中でフリーになります。すると、肝臓へとより分布するので肝クリアランスは増加すると考えられます。低下する要因では、ありません。

イメージとしては、先のレジのたとえに加えて「商品が、盗難防止目的で棚から取り出せなくなっている状態」が血中タンパク質と結合している薬物 と考えるとよいかもしれません。血中タンパク結合が阻害される とは、店員さんを呼んで商品をわざわざ取り出してもらわなくても大丈夫になる → 商品をさくさくとれる → どんどんとってレジにもっていける → レジにもっていく商品の量が多くなる → スキャンする商品の量が多くなる というイメージです。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい選択肢です。
肝取り込みが阻害されるとは、先のたとえでいうと数台あるレジのうち、何台かにおいてレジトラブルがおきた ようなものです。急にこむし、流れは滞ってスキャンする商品の量は減少する イメージです。

選択肢 4 ですが
肝代謝酵素が誘導されると肝臓でどんどん薬が代謝されるようになり、肝クリアランスは増加すると考えられます。低下する要因では、ありません。

先のたとえでいうと、レジ応援がいっぱいきてくれて各レジに2人ついてくれてがんがんスキャンしてくれてスキャンする商品の量は増加する イメージです。

選択肢 5 は、正しい選択肢です。
胆汁排泄の阻害がおきるとは、先のたとえに加えてレジスキャンしないで、テープだけ貼って処理するドリンクの箱ケース買い が胆汁排泄であると考えるとよいかもしれません。(この場合は、テープを貼ればスキャンした商品の量に加わっていると考えます。)そして、阻害がおきるとはちょうどテープが切れてしまい、わたわたしている状態のようなものです。ひとまず他の商品はスキャンして通すことができますが、ドリンクが処理できず全体としては、スキャンする商品の量が減少します。

以上より、正解は 3,5 です。

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