公務員試験 H30年 国家専門職(教養) No.28解説

 問 題     

生物をめぐる問題に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.2016 年,地球温暖化の影響で平年より高い水温が続いたため,奄美群島から八重山諸島にかけての広い海域で,サンゴに大量のプランクトンが寄生してしまう白化現象が発生した。また同年,外国漁船によるサンゴの違法操業が小笠原諸島周辺海域で多発したことを受けて,違法操業に対する罰金を引き上げる法律改正が行われた。

2.2016 年,国連環境計画(UNEP)がレッドリストを更新し,オオムギなどの作物の近縁野生種やキリンなどが絶滅危惧種と評価された。これを受けて同年,我が国で開催された生物多様性条約の締約国会議では,10 年間で生物多様性の損失を止めるため,緊急の行動を起こす目標を盛り込んだ名古屋議定書が採択された。

3.ワシントン条約では,野生動物種について,絶滅のおそれの程度に応じて附属書Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの3 区分に分類し,国際取引の規制が行われている。2016 年には,ヨーロッパウナギとニホンウナギが最も規制の厳しい附属書Ⅰに掲載されることとなった一方,個体数が回復したアフリカゾウは附属書から削除され,国連の管理の下,象牙の商業取引が再開されることとなった。

4.ヒアリは毒を持った中国原産のアリであり,近年,グローバル化とともに深刻な影響を及ぼす外来生物として世界各地に広がっている。2017 年,我が国でもヒアリが初確認されたことを受けて,特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律が制定されるとともに,ヒアリは特定外来生物に指定された。

5.中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)では,国際的な資源である太平洋のくろまぐろ資源の回復に向けた取組が行われている。我が国では,漁業の発展と水産物の供給の安定を目的とする海洋生物資源の保存及び管理に関する法律が定められており,くろまぐろについては,2017年に同法に基づく漁獲可能量を定める制度の対象に加えられた。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが、サンゴの白化現象に関して誤りです。高温等により、細胞内の「褐色藻が逃げ出したり、死滅」することで、色が白くなります。「サンゴに大量のプランクトンが寄生」することで白化するわけではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、一文目は妥当です。しかし、名古屋議定書は「2010年」に採択された議定書です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが、一文目は妥当です。しかし、ヨーロッパウナギについては試験時点で附属書Ⅱです。また、ワシントン条約の象徴ともいえるアフリカゾウに関しては、附属書から削除されてはおらず、商業取引の再開もされていません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、「特定外来生物による・・・法律」は 2005 年に施行されています。よって、選択肢 4 は誤りです。ちなみに、ヒアリは「中国原産」ではなく「南米大陸原産」と考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、1~4誤りなので、正解は 5 です。

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