公務員試験 H30年 国家一般職(農学) No.22 解説

 問 題     

作物の育種に関する記述 A ~ D のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。

A.純系選抜法は、他殖性作物集団から優良系統を分離する育種法である。この育種法は、トウモロコシの育種で多く用いられ、他の作物にも適用されている。

B.循環選抜法は、選抜と交雑のサイクルを繰り返して、遺伝子の組換えを積極的に行わせ、望ましい遺伝子を集積していく育種法である。

C.合成品種育種法は、 2 種類の親系統間で相互に交雑し、その後代を品種とする育種法である。我が国では、ダイズや牧草類の育種で多く用いられている。

D.組合せ能力とは、一代雑種を作出したときの雑種強勢の現れ方で評価する親系統の能力を指す。一般組合せ能力と特定組合せ能力があり、トップ交雑や総当たり交雑により、いずれの能力も検定できる。

1.A、B
2.A、C
3.B、C
4.B、D
5.C、D

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 A ですが
純系選抜法は、交配育種において優良な個体を順次選抜し、その子孫も選抜することで、遺伝的にほぼ均質な純系を育成していく育種法です。主にイネやコムギなどの自殖性作物に用いられます。「他殖性作物集団」ではありません。また「トウモロコシ」で多く用いられていません。記述 A は誤りです。

記述 B は妥当です。
循環選抜法についての記述です。

記述 C ですが
合成品種育種法は、複数の異なる品種を交雑させ、その雑種集団を育成する育種法です。主に他殖性作物で利用され、雑種強勢 (交雑によって得られる個体が親よりも優れる現象) を利用します。ダイズ は自殖性です。また、多く用いられるのは畜産などであり「牧草類の育種」ではないと考えられます。記述 C は誤りです。

記述 D は妥当です。
組合せ能力についての記述です。


以上より、正解は 4 です。

コメント

  1. 匿名希望 より:

    A. 純系選抜法は、自殖性作物集団から優良個体を分離する育種法です。遺伝的に多様な個体が混じっている在来種を選抜して、優良で遺伝的に均質な系統を品種に育成してきました。純系選抜法は、交配をともないません。純系選抜法はイネおよびコムギでは1910~1920年頃に用いられました。自殖性作物で交配後代を選抜するのは、系統育種法や集団育種法です。
     他殖性作物における集団選抜法は、集団から優良個体ないし優良系統を選抜します。分離ではありません。純系選抜は分離なので、ここは引っ掛けと見ていいでしょう。

    C. 合成品種育種法は牧草の育種に用いられています。多数の親系統を用います。
     牧草育種といえば、雪印種苗株式会社です。古い品種だと、昭和36年から販売したチモシーの「クライマックス」が合成品種でした。昭和59年にオーチャードグラスで、組合せ能力の高い7栄養系による合成品種として「ナツミドリ」を登録していました。
     北海道の牧草・飼料作物優良品種一覧表に掲載されている品種から21世紀の品種も見てみましょう。ペレニアルライグラスの「チニタ」(北海道、2008年出願)は、6栄養系に由来する合成品種です。アカクローバの「リョクユウ」(農研機構、2010年出願)は、母系選抜による8母系から構成された合成品種です。