公務員試験 H30年 国家一般職(教養) No.29解説

 問 題     

我が国の近年の法や条約をめぐる動向等に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.民法は,第二次世界大戦終結直後に制定されて以来,契約等の債権関係の規定の改正がほとんど行われておらず,社会・経済の変化への対応が求められていた。そこで,2017 年の改正では,部分的に残っていた片仮名・文語体の表記が平仮名・口語体となったほか,時効期間の長期化を避けるため,業種ごとに異なる時効の規定が設けられた。

2.我が国は,憲法上,象徴天皇制を採用しており,天皇は国政に関する権能を持たず,国会の助言と承認に基づいて儀礼的・形式的な国事行為のみを行うこととされている。憲法に定められている国事行為には,国会の召集のほか,被災地への訪問なども含まれる。2017 年には,後代まで適用される,天皇の退位等に関する皇室典範特例法が制定された。

3.水俣病などの水銀被害を経験した我が国は,水銀対策の経験と教訓を世界に発信するなどして国際的な水銀対策の交渉の進展に貢献してきており,2013 年に熊本市・水俣市で行われた外交会議において水銀に関する水俣条約が採択された。我が国は,同条約の的確かつ円滑な実施を確保するため,水銀汚染防止法を制定するなどし,その後,2016 年には同条約を締結した。

4.旅館業法に違反して,住宅の全部又は一部を活用し宿泊料を受けて人を宿泊させる民泊サービスが増加していることを受けて,2017 年に住宅宿泊事業法が制定された。同法に基づき民泊に関する国家戦略特区に認定された区域以外では,個人による外国籍の者への住宅を活用した宿泊先の提供が禁止されることとなった。

5.パーソナルデータを含むビッグデータの利活用ができる環境の整備のため,個人情報保護法が改正され,2017 年から,国の認定を受けた民間団体が作成した匿名加工情報の提供が始まった。一方,匿名加工情報以外の個人情報については,企業や個人が他の企業や報道機関などの第三者に提供しようとする場合,同法により本人の同意が必要とされている。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが、まちまちだった時効が、原則「主観的起算点から5年間・客観的起算点から10年間」に統一されました。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、「一代限りの」特例法です。「後代まで適用」ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。

選択肢 4 ですが、住宅宿泊事業法は、急速に増加するいわゆる民泊について、安全面・衛生面の確保がなされていないことなどに対応するため新たに制定された法律です。「宿泊先の提供が禁止」といったものではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが、匿名加工情報を作成するのに、国の認定を受けなければいけないといったことはありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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