公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.57解説

 問 題     

近代家族に関する記述ア~エのうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.G.P.マードックは,家族を,夫婦と未婚の子から成る核家族と複数組の夫婦を含む拡大家族の二つに類型化した上で,近代化によって,かつて家族が担ってきた機能が家族外のシステムに専門分化した結果,子供の社会化と成人のパーソナリティの安定の二つが家族に固有な機能として残ったとした。

イ.P.アリエスは,夫婦を中心とした相互の愛情と合意によって統制された家族を「友愛家族」,慣習や法律によって統制された家族を「制度家族」と呼び,近代化によって,「友愛家族」から「制度家族」へ移行する過程について論じた。

ウ.E.ショーターは,『近代家族の形成』において,男女関係におけるロマンティック・ラブの成立や母子関係における母性愛の出現などの「感情革命」が,資本主義や個人主義の影響を受ける形で生起し,伝統家族から近代家族への変化をもたらしたとした。

エ.A.R.ホックシールドは,『シャドウ・ワーク』において,家庭で主に女性が行う家事労働を典型とする賃金が支払われない労働のことを「シャドウ・ワーク」と呼び,シャドウ・ワークを市場経済とは切り離されたものとして捉えた。

1.ウ
2.エ
3.ア,イ
4.ア,エ
5.イ,ウ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア ですが
マードックは、家族を「3つ」に類型化しました。すなわち、核家族、複婚家族、拡大家族です。核家族固有の機能として 4 つを指摘しました。性的機能、経済的機能、生殖的機能、教育的機能です。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
近代化による家族の変化は、バージェスによって「制度から友愛へ」と表現されました。家族が古い慣習や家制度から解放されて,純粋な人間集団になっていく過程を表しています。ちなみに、P.アリエスは「<子供>の誕生」で、「子ども」という概念・観点から、家族だけでなく、遊び、労働など社会全体を分析しました。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
ショーターが唱えた近代家族についての記述です。

記述 エ ですが
「シャドウ・ワーク」は、イヴァン・イリッチの著書です。ホックシールドは肉体労働、頭脳労働に加え「感情労働」を提唱しました。記述 エ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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