公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.29解説

 問 題     

DSMー5(精神疾患の診断・統計マニュアル)における注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder:ADHD)に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ADHD の基本的特徴は,機能又は発達を妨げるほどの不注意,多動性,衝動性である。これらは,加齢によって変化するものではなく,特に多動性については,青年期や成人期においても変わることなく観察されることが多い。

2.ADHD の症状は,自閉スペクトラム症の症状と重なる場合がある。DSM⊖5 では,より重篤な問題を示すとされている自閉スペクトラム症の診断を優先させる原則があることから,二つの診断名は併記しないとされている。

3.ADHD の基本的症状の一つである衝動性とは,「事前に見通しを立てることなく即座に行われる,及び自分に害となる可能性の高い性急な行動」である。例えば,質問が終わる前に出し抜けに答えてしまったり,他人にすぐにちょっかいをかけたりすることが,これに当たる。

4.ADHD がある者は,その特性から周囲からの拒絶や叱責を受けやすく,結果として二次的な障害を生じさせることがある。二次的な障害として,不安症や抑うつ障害に罹患することはまれであるが,暴力や破壊行為といった行動上の問題は現れやすい。

5.ADHD がある者の一部には,児童期に素行症,青年期に反抗挑発症の症状を呈し,成人期に反社会的パーソナリティ障害へと展開する者がいる。この時間的展開は「DBD(Disruptive Behavior Disorder)マーチ」と呼ばれる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「多動性・衝動性」は、加齢に伴い軽度化することが知られています。「加齢によって変化するものではなく」という記述は妥当ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
DSM-5 では、ADHD と ASD の併記が可能になりました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
衝動性についての記述です。

選択肢 4 ですが
ADHD の二次的障害として、不安症や抑うつ障害も知られています。選択肢 4 は妥当ではありません。

選択肢 5 ですが
加齢に伴って、発達障害→反抗挑戦性障害→素行(行為)障害(犯罪を伴う非行)→反社会性人格障害へと至る一連の流れDBD (Disruptive Behavior Disorders) マーチ(破壊的行為障害)と呼びます。(H28no17)。素行症→反抗挑発症ではありません。順番が違います。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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