公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.17解説

 問 題     

児童期から青年期にかけての精神医学的な問題に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.神経性無食欲症(Anorexia Nervosa)は,体重を減少させようとする意図的な行動,体重増加に対する著しい恐怖,身体像の障害などを特徴とする。病気であることをなかなか認めようとしない場合も多いことから,病気の現実について説明し,治療への動機づけを高めることが必要である。有効な治療法には,認知行動療法や家族療法があり,体重低下が著しく,身体的危機が切迫しているときには入院治療が考慮される。

2.チック障害(Tic Disorder)は,突発的,急速,反復性,非律動性の運動又は発声を特徴とし,四つの診断的カテゴリーから構成されている。各チック障害群には軽度から重度まで階層的順序があり,一度ある階層レベルのチック障害と診断されると,それより下位の階層の診断がなされることはない。トゥレット障害は,最も下位の階層であり,運動チック又は音声チックのいずれかがあるものを指す。

3.注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は,機能又は発達を妨げるほどの不注意と多動性・衝動性,又はそのいずれかの持続的な様式があることを特徴とする。特定の状況で不注意・多動の特徴が目立つ場合でも診断できることになっているため,不注意等の症状が学校場面に限定されることがある。

4.反応性愛着障害(Reactive Attachment Disorder)は,社会的相互作用が抑制され,過度に警戒的であることや,養育者に対し,近接と回避を繰り返すという極めて両価的な態度を示すことなどを特徴とする。そのため,自閉症スペクトラム障害と重なるような行動様式を示すことがあり,両方の診断名が付されることが多い。

5.素行障害(Conduct Disorder)は,他者の基本的人権又は年齢相応の主要な社会的規範・規則を侵害することが反復し持続する行動様式を特徴とする。これが深刻化すると反抗挑戦性障害や反社会性パーソナリティ障害につながるとされており,それぞれの診断基準には,15 歳以前に発症した素行障害の証拠があることが含まれている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
神経性無食欲症についてです。

選択肢 2 ですが
トゥレット障害は、最も「上位」の階層です。多種類の運動チック、1種類以上の音声チックが1年以上続くものを指します。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ADHD は、「複数の状況」で症状が存在することが診断には必要です。従って、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
反応性愛着障害の診断基準に「自閉スペクトラム症の診断基準を満たさない」とあるため、「重なるような行動様式・・・、両方の診断名が付される・・・」という記述は妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
加齢に伴って、発達障害→反抗挑戦性障害→素行(行為)障害(犯罪を伴う非行)→反社会性人格障害へと至る一連の流れを DBD (Disruptive Behavior Disorders) マーチ(破壊的行為障害)と呼びます。「素行障害が深刻化して反抗挑戦性障害につながる」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

コメント