公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.24解説

 問 題     

知能や知能検査に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ビネー(Binet, A.)は,知能を注意や判断等の個々の能力が集まったものであると考えた。この考えに基づき開発されたビネー式検査では,難易度の異なる問題を年齢級ごとに配当し,どの程度まで正答できたかを基に,習得度と認知処理過程という二つの下位項目別の精神年齢を算出することができる。

2.スピアマン(Spearman, C. E.)は,知能は,全ての知的活動に共通に働くg因子と,相互に独立し,個々の知的活動のみに特有なs因子から成るという二因子説を唱えた。後にウェクスラー (Wechsler, D.)が開発したウェクスラー=ベルヴュー式知能検査は,二因子説に基づいており, g因子を動作性検査によって,s因子を言語性検査によって測定することができる。

3.キャッテル(Cattell, R. B.)は,流動性知能と結晶性知能から成るモデルを提唱した。流動性知能は,新しい場面への適応を必要とする際に働く力であり,環境因子・文化因子により強く影響されるのに対し,結晶性知能は,過去の経験を高度に適用して得られた判断力や習慣であり,流動性知能よりも大脳の生理的基盤との関係が強いと考えられている。

4.ガードナー(Gardner, H.)は,①言語的知能,②論理・数学的知能,③空間的知能,④音楽的知能,⑤身体・運動的知能,⑥個人的知能という六つの知能から成る多重知能理論を提唱した。この理論の特徴は,それぞれの知能が相互に影響を及ぼしながら発達し機能していると仮定していることである。

5.ソーンダイク(Thorndike, E. L.)らは,社会的な文脈の中で発揮される対人的な能力として,社会的知能の概念を提唱した。後にスターンバーグ(Sternberg, R. J.)は,コンポーネント理論,経験理論,文脈理論の三本柱から成る知能の鼎てい立理論を提唱しており,文脈理論の中に社会的知能の理論が含まれている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ビネー式検査では、どの程度まで正答できたかを基に精神年齢や知能指数が算出されます。ビネー式検査では、基本的に「要素に分解されない一般知能」を測定しています。「2つの下位項目別の精神年齢」を算出する試験ではないと考えられます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
前半部分は妥当です。スピアマンによる知能の定義についての記述です。後半部分ですが、ウェクスラー式知能検査は「g 因子を動作性検査・・・、s 因子を言語性検査によって測定することができる」という検査ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
流動性知能は、結晶性知能よりも大脳の生理的基盤との関係が強いと考えられています。結晶性知能は、環境因子・文化因子により強く影響されます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ガードナーは「知能は、独立の複数の能力からなる」と考え、「8つの知能」からなる多重知能理論を提唱しました。「六つ」ではありません。また「それぞれの知能が相互に影響を及ぼしながら」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
ソーンダイクの社会的知能、スタンバーグの知能の鼎立理論についての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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