公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.16解説

 問 題     

集団心理療法に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.サイコドラマ(psychodrama)は,モレノ(Moreno, J. L.)によって創始された即興劇の方法を用いた技法であり,監督,補助自我,演者,観客,舞台の五つの要素から構成される。モレノは,演者が監督の指示と補助自我のフィードバックを受けることで望ましい行動を体験的に学習することや,モデリング理論に基づき観客が演者を観察して学習することをサイコドラマの主たる目的とした。

2.社会的スキル訓練(Social Skills Training:SST)は,生活の中で必要とされる対人行動の獲得を,体験学習等を通じて構造的・体系的に援助していく方法である。SST において,ファシリテーターは,指示を最小限にとどめ,率直な自己開示や自らの受容,他者からの受容への気付きを促進することを通じてメンバーの自主性を引き出し,自由な自己表現を可能にすることにより,対人行動のスキルを向上させることを目指す。

3.セルフヘルプ・グループ(self help group)は,同じ悩みや問題を抱えた人々が集まり,相互に援助し合うことを通じて自己の回復を図る治療グループであり,アルコール依存,薬物依存,ギャンブル依存などの嗜癖問題を抱える者のグループが代表的である。薬物依存者のグループの一つであるNA(Narcotic Anonymous)では,原則的に医師やセラピストなどがファシリテーターとして参加し,12 ステップ・プログラムに基づく心理教育を行うこととしている。

4.ゲシュタルト療法(Gestalt therapy)は,パールズ(Perls, F. S.)が創始した心理療法であり,過去の体験に焦点を当て,クライエントの無意識にある不安や葛藤をセラピストの解釈によって意識化させ,情緒的な体験を伴う自己洞察を深めさせることで,自己実現を促進することを目的とする療法である。代表的な技法に,空の椅子にイメージ中の他者や自己を座らせて対話をするホットシートなどがある。

5.集団認知行動療法(group cognitive behavior therapy)は,不適応的な思考プロセスや問題行動の特定及び修正に焦点を当て,認知再構成法やリラクセーショントレーニングなどの認知行動療法の技術や方法を用いる集団療法である。この療法の利点は,他のメンバーの話を聞くことで行動のレパートリーを増やすことができることや,認知のゆがみに気付く能力を高められることなどである。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
サイコドラマ(心理劇)は、即興劇を用いた集団療法の一つです。モレノが考案しました。自分や他者についての受容、気づきを促すことが目的です。(H26no15)。「望ましい行動を体験的に学習すること」や「モデリング理論に基づき・・・観察して学習すること」が目的ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
社会的スキル訓練とは、生活上必要とされる対人行動の獲得の援助方法です。前半部分は妥当です。後半部分ですが、前半部分の記述を前提とした時「自由な自己表現を可能にすること」が、生活上必要とされる対人行動 というのは、少し違うと感じるのではないでしょうか。記述は「エンカウンターグループ」についてと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
セルフヘルプグループは、当事者同士の自助グループのことです。「原則的に医師やセラピストがファシリテーターとして参加」するグループではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ゲシュタルト療法は「今ここで、いかに何を話しているか」を問題にする、という点が特徴です。「過去の体験に焦点を当て」るわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
集団認知行動療法についての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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