公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.63解説

 問 題     

性格・パーソナリティの理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.クレッチマー(Kretschmer, E.)は,人間の体型と性格をそれぞれ3 類型に分類し,内臓の発達が良く,身体が柔らかく丸い内胚葉型の体型は頭脳緊張型の性格に,筋骨がたくましい中胚葉型の体型は内臓緊張型の性格に,神経系統が発達し,身体が瘦せた外胚葉型の体型は身体緊張型の性格にそれぞれ対応するという類型論を提唱した。

2.精神分析学を創始したフロイト(Freud, S.)は,精神的活動のために用いられるエネルギーであるリビドーの向かう方向性に着目し,リビドーが自己の内面に向けられるタイプの人は,内気で思慮深いが実行力に欠ける内向型となり,リビドーが自己以外の外側に向けられるタイプの人は,感情が表れやすく社交的で決断力のある外向型になると考えた。

3.ロジャーズ(Rogers, C.R.)は,人間の欲求を階層として分類し,その最上位にある自己実現に向けて,人間はそれぞれのパーソナリティを自ら成長させていくと考えた。この考え方を臨床現場に応用したマズロー(Maslow, A.H.)は,クライエントに指示を与えることなく,クライエント自身の成長を促すことで問題の解決を目指すクライエント中心療法を創始した。

4.オルポート(Allport, G.W.)は,パーソナリティを表す用語を辞書から収集し,それらを多くの人々に共通する特性と個人に特徴的な特性に分類した。その後,因子分析の手法を用いて特性の分析を行ったキャッテル(Cattell, R.B.)は,パーソナリティの基本的特性としてビッグ・ファイブと呼ばれる5 次元の性格特性を提案した。

5.アイゼンク(Eysenck, H.J.)は,パーソナリティを特殊反応,習慣的反応,特性,類型の4 水準から成る階層構造として捉えた。また,彼は,このモデルを前提として,精神医学的診断,質問紙法,客観的動作テストなどから得られた諸変数を因子分析した結果に基づき,パーソナリティの基本的次元を「外向―内向」と「神経症的傾向」という二つの次元であるとした。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
記述はシェルドンの性格類型に関する記述です。クレッチマーではありません。また、体型と性格の対応が違います。内胚葉型→内蔵緊張型、中胚葉型→身体緊張型、外胚葉型→神経緊張型です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ユングについての記述です。フロイトではありません。フロイトは、精神構造を、無意識を含めたイド(エス)、自我、超自我という3層から成るという自我論を提唱しました。原初的で本能的性欲動はイドと呼ばれ、性的エネルギーであるリビドーはイド(エス)を源泉とすると考えました。また、フロイトは、性的エネルギーであるリビドーの充足を満たす性感帯から発達をとらえ、それぞれの段階でリビドーが十分満たされなかったり、過剰に満たされた場合、その段階に心理的固着が起きて、その段階への退行、不適応につながると考えました。(H28no63)。リビドーの方向性に着目して内向型、外向型と分類したわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
クライエント中心療法を創始したのはロジャーズです。人間の欲求を階層として分類したのがマズローです。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
オルポートは共通特性と個人的特性に、基礎をなす身体・知能・気質を加え、個人の性格を表示する心誌 (サイコグラフ)を作成しました。キャッテルは、因子分析法の使用により、結晶性知能と流動性知能を発見しました。ビッグファイブではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
アイゼンクについての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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