公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.63解説

 問 題     

次は,S.フロイトに関する記述であるが,A〜Eに当てはまるものの組合せとして妥当なのはどれか。

精神分析療法及び精神分析学を創始したフロイトは,人間行動の根源的な衝動として快楽原則に従う本能的な性の動機づけを重視して,そのエネルギーとしてリビドーを想定した。リビドーは通常の社会生活において意識下に抑圧されて無意識なものとなっているが,絶えず意識化されようとする。

フロイトによれば,パーソナリティは自我,超自我,エス(イド)の三つの機能から成る力学的構造であり,その中では,リビドーはA の中に位置している。一方, B は,発達途上の幼児期に形成される部分で,両親との同一化の産物であり,両親の道徳的影響が内在化したものとして自己の行動を監視する良心の役割をもち,しかも,理想的な自己像を提供して理想像(自我理想)に沿うように要求していく役割を担っている。C は,人格の意識的で合理的な部分で,現実外界への適応のためにA の原始的な欲望や感情をコントロールして現実世界の諸条件に従わせる役割を担っている。

また,フロイトは,未分化なリビドーが分化していくことによって精神発達・人格発達がもたらされるとする理論を提唱した。しかし,この過程は必ずしも全面的な発達をするとは限らない。発達の失敗も起こる。この発達の失敗について,フロイトは神経症者の治療体験から示唆を得て,乳幼児期の発達段階のどこかでリビドーの欲求不満が引き起こされ, D が生じ,その段階特有の未成熟な傾向や病的な症状が形成されるという結論を得た。

さらに, D があっても多くの人はその先の発達段階へ進むが,その後に欲求挫折が生じるとE が生じるとされる。例えば,エディプス期の葛藤に耐えられない子どもが口唇期にみられる指しゃぶりをするなどである。

    A  B  C  D  E
1.自我  超自我 エス  抑圧 退行
2.超自我 自我  エス  固着 反動形成
3.超自我 エス  自我  抑圧 反動形成
4.エス  超自我 自我  固着 退行
5.エス  自我  超自我 抑圧 退行

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

フロイトは、精神構造を、無意識を含めたイド(エス)、自我、超自我という3層から成るという自我論を提唱しました。原初的で本能的性欲動はイドと呼ばれ、性的エネルギーであるリビドーはイド(エス)を源泉とすると考えました。従って、A は「エス」 です。正解は 4 or 5 です。

また、フロイトは、性的エネルギーであるリビドーの充足を満たす性感帯から発達をとらえ、それぞれの段階でリビドーが十分満たされなかったり、過剰に満たされた場合、その段階に心理的固着が起きて、その段階への退行、不適応につながると考えました。D は「固着」です。

以上より、正解は 4 です。

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