公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.57解説

 問 題     

É.デュルケムの理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.彼は,法,道徳,慣習などの個人に対して外在し個人に拘束を及ぼす,行動,思考,感覚の諸様式を「社会的事実」と呼び,それは「物のように」考察されなければならないとした。また,彼は,社会的事実を心理的現象とは異なるものであると考えた。

2.彼は,近代的な分業が発達する以前の社会に見られた異質な成員の相互依存による連帯を有機的連帯と呼び,分業の発達によって,有機的連帯の社会から,没個性化した諸個人が無機物の分子のように結合した機械的連帯の社会へ移行したと論じた。

3.彼は,自殺を,自己本位的自殺,集団本位的自殺,アノミー的自殺に分類し,後二者を近代社会の典型的自殺であるとした。このうち,アノミー的自殺を,人々の肥大化した欲求が社会によって統制されることにより生じるものであると指摘した。

4.彼は,かつては社会の秩序を維持する役割を果たしていた職業集団が,近代社会においてはその存在意義を失ったと指摘し,社会の秩序を再形成するためには,伝統的な宗教の再興が必要であると論じた。

5.彼は,犯罪を,人々の集合意識を傷つけ,社会全体を脅かす「異常」な行為であるとし,犯罪の全くない「正常」な社会を構築するためには,法律によって刑の厳罰化を進めることにより犯罪の抑止力を高める必要があると指摘した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
H29no57 選択肢 1 

選択肢 2 ですが
デュルケムは、社会分業論において、相互に類似した同質的な成員が結合した「機械的連帯」の社会から,独立した人格を持った異質の成員が自らの個性を能動的に生かしながら,分業に基づいて相互に結びつく「有機的連帯」へと移行するという社会変動を想定しました。(H28no57)。機械的 → 有機的 という流れです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
デュルケムは、自殺を4分類しました。1:利他的、2:利己的、3:アノミー的、4:宿命的 の4つです。この中で「アノミー的自殺」とは、社会的規制がない状態において、「より多くの自由」→「実現しきれない欲望」→「幻滅して自殺」というパターンです。(H26no50)。「社会によって統制されることにより生じるもの」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
デュルケムは、社会分業論において、職業集団もしくは同業組合を再建すべきであるという立場を示しています。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
デュルケムは、「犯罪はむしろ社会において必要不可欠である」という犯罪正常説を唱えました。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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