公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.22解説

 問 題     

代理権に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.任意代理における代理人は,意思能力を有している必要はあるが,行為能力は要しないとされていることから,本人が制限行為能力者を代理人とした場合は,本人は,代理人の行為能力の制限を理由に代理行為を取り消すことはできない。

イ.民法第 761 条は,夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定していると解すべきであるから,夫婦の一方が当該代理権の範囲を超えて第三者と法律行為をした場合は,当該代理権を基礎として,一般的に権限外の行為の表見代理
が認められる。

ウ.無権代理人が,本人所有の不動産を相手方に売り渡す契約を締結し,その後,本人から当該不動産を譲り受けて所有権を取得した場合において,相手方が,無権代理人に対し,民法第117 条による履行を求めたときは,売買契約が無権代理人と相手方との間に成立したと同様
の効果を生じる。

エ.無権代理行為の相手方が,本人に対し,相当の期間を定めて,その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず,本人がその期間内に確答をしなかったときは,本人による追認があったものとみなされる。

オ.民法第 117 条による無権代理人の責任は,法律が特別に認めた無過失責任であり,同条第 1 項が無権代理人に重い責任を負わせた一方,同条第 2 項は相手方が保護に値しないときは無権代理人の免責を認めた趣旨であることに照らすと,無権代理人の免責要件である相手方の過失については,重大な過失に限定されるべきものではない。

1.ア,ウ
2.エ,オ
3.ア,イ,エ
4.ア,ウ,オ
5.イ,ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
改正民法第 102 条によれば、「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない」です。

記述 イ ですが
夫婦の日常家事と表見代理に関する 最判 S44.12.18 によれば、「日常の家事に関する代理権の存在を基礎として広く一般的に表見代理の成立を工程することは、夫婦の財産的独立を損なうおそれがあり相当ではない」として、761 条を 110 条の基本代理権とすることはできないと示しました。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
最判 S41.4.26 の通りです。

記述 エ ですが
無権代理の相手方の催告権に関する 民法第 114 条によれば、「・・・本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。」とあります。追認があったものとみなされるわけではありません。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
過失ある相手方と無権代理人の責任に関する 最判 S62.7.7 によれば、民法 117 条 2 項にいう「過失」は、重過失に限定されません。

以上より、正解は 4 です。

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