公務員試験 H29年 国家一般職(教養) No.37解説

 問 題     

近現代の欧米の思想家等に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.プラグマティズムを発展させたジェームズは,真理の基準は実生活に役立つという性質を持っているとする,真理の有用性という独自の理論を打ち立てた。さらにジェームズは,この実用主義の立場から宗教の価値を論じ,科学的な思考と宗教とを調和させようとした。

2.M.ヴェーバーは,近代社会においては,官僚制の原理に基づき,反理性的なものを日常生活から排除し,巧妙に管理する仕組みにより,人間を社会に順応させるための見えない権力が働いていることを明らかにした。また,合理化が進むことでそこから解放され,無気力化が抑制されるとした。

3.ハイデッガーは,フランクフルト学派の代表的な哲学者であり,人間は,誰もが日常生活の中で個性的で独自な在り方をしているとした。そして,世の中で出会う様々な他者に関わることで,人間が死への存在であるために生じる不安が解消され,環境によりよく適応することができるとした。

4.フロムは,ヒューマニズムに基づく社会変化の観察から,伝統指向型,内部指向型,他人指向型の三類型を立てた。現代では内部指向型が支配的であり,マスメディアで喧伝されるものにより人々が不安や孤独に駆られ,身近な仲間も否定するようになると指摘した。

5.ロールズは,社会全体の効用の最大化を目指す功利主義を主張した。自己の能力や立場などを知ることができない無知のベールがかけられた原初状態においては,より質の高い精神的快楽,すなわち献身の行為を追求すべきだという正義の原理を説いた。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、妥当な記述です。

選択肢 2 ですが、ヴェーバーは”社会学の創始者”と呼ばれます。官僚制がより効果を発揮するにつれ、感情を超越した「専門家気質」を持てるようになる、としました。「合理化が・・・無気力化が抑制」ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが、フランクフルト学派はアドルノ、ハバーマスなどです。ハイデガーではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、三類型は、リースマンによって提唱されました。フロムではありません。

選択肢 5 ですが、ロールズは、功利主義とは異なる「正義論」を主張しました。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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