公務員試験 H29年 国家一般職(教養) No.32解説

 問 題     

化学結合や結晶に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.イオン結合とは,陽イオンと陰イオンが静電気力によって結び付いた結合のことをいう。イオン結合によってできているイオン結晶は,一般に,硬いが,外部からの力にはもろく,また,結晶状態では電気を導かないが,水溶液にすると電気を導く。

2.共有結合とは, 2 個の原子の間で電子を共有してできる結合のことをいう。窒素分子は窒素原子が二重結合した物質で電子を4 個共有している。また,非金属の原子が多数,次々に共有結合した構造の結晶を共有結晶といい,例としてはドライアイスが挙げられる。

3.それぞれの原子が結合している原子の陽子を引き付けようとする強さには差があり,この強さの程度のことを電気陰性度と呼ぶ。電気陰性度の差によりそれぞれの結合に極性が生じたとしても,分子としては極性がないものも存在し,例としてはアンモニアが挙げられる。

4.分子結晶とは,共有結合より強い結合によって分子が規則正しく配列している結晶のことをいう。分子結晶は,一般に,電気伝導性が大きく,水に溶けやすい。例としては塩化ナトリウムが挙げられる。

5.金属結合とは,金属原子から放出された陽子と電子が自由に動き回り,金属原子同士を結び付ける結合のことをいう。金属結晶は多数の金属原子が金属結合により規則正しく配列してできており,熱伝導性,電気伝導性が大きく,潮解性があるなどの特徴を持つ。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、妥当な記述です。イオン結晶の代表例は 食塩(NaCl) です。

選択肢 2 ですが、窒素分子は、電子 3 個共有です。N≡N という表現を見たことがあるかもしれません。NとNの間の棒は「1対の共有電子対」を表しています。間に3本線でつながっているというのが、電子を3個共有していると考えればよいです。

また、共有結晶の代表例は、炭素原子の結晶である黒鉛、フラーレンなどです。ドライアイスは、分子結晶の代表例です。

ちなみに、分子結晶の例としては、ドライアイス(二酸化炭素)、ヨウ素、ナフタレンをおさえておくとよいです。これらは結合力がとても小さく、液体を経ずに「固体↔気体」へとダイレクトに状態変化 = 「昇華」する代表的物質でもあります。

選択肢 3 ですが、電気陰性度は、電子を引きつけようとする力です。陽子ではありません。よって選択肢 3 は誤りです。ちなみに、分子として極性がないものとしては、直線分子である CO2や、メタン(CH4) が代表例です。

選択肢 4 ですが、分子結晶は、弱い結合によりつながっています。代表例はドライアイス、ヨウ素、ナフタレンです。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが、金属結合は、陽イオン+自由電子 による結合です。「放出された陽子」ではありません。また、潮解性とは空気中の水分を含んで自発的に溶けてしまうという性質です。代表例は NaOH です。金属の特徴ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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