公務員試験 H29年 国家一般職(教養) No.29解説

 問 題     

我が国の農業や食に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.産業構造の高度化により,農業など第1 次産業や,運輸業など第2 次産業の就業者割合が低下してきており,平成27 年には,第3 次産業の就業者割合が8 割を超えた。農業の分野においては,担い手不足の状況を打開するため,第2 次産業や第3 次産業の企業でも参入することを可能とする,農業の6 次産業化が進められている。

2.食料自給率とは,国内の食料消費が国産でどの程度賄えているかを示す指標であり,重量ベースで算出する品目別自給率のほか,供給熱量(カロリー)ベースと生産額ベースの2 通りの方法で算出する総合食料自給率がある。総合食料自給率は,長期的に低下傾向で推移しており,平成27 年には,カロリーベースで40 % 以下となっている。

3.主食であるコメについては,ウルグアイ = ラウンド以降,食糧管理制度を通じて政府による買入れが行われてきた。コメの価格は,国産より外国産の方が高い,逆ザヤと呼ばれる状態にあったが,東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済連携協定(EPA)により,自主流通米を基本として,流通と価格形成が弾力化され,政府が部分的に管理することとなった。

4.農林物資の規格化等に関する法律(JAS 法)に基づき,消費者に販売される食品にJAS マークの貼付及び食品表示が義務付けられている。平成27 年には,機能性表示食品制度が新たに開始され,生産段階から最終消費段階まで,製品の流通経路が追跡可能となったほか,原産地等について,虚偽の表示をして販売した者に対する罰則規定が設けられることとなった。

5.近年,所有者の死亡等による耕作放棄地が増加しており,各地の農業協同組合(JA)は,農地中間管理機構(農地集積バンク)を設立して耕作放棄地を借り受け,農地の集約化を行うことで,生産基盤の脆弱化を防いでいる。平成28 年には,農地集積バンクとしての機能を強化するため,民間協同組織であったJA が第三セクターに転換された。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが、「農業の 6次産業化」とは、生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも取り組むことです。1×2×3で6です。第 2,3 次産業の「企業参入を可能にすること」ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は、妥当な記述です。

選択肢 3 ですが、逆ザヤとは、政府か米を買い取る値段が、市場で出回る値段よりも高くなってしまった状態のことです。「国産より外国産の方が高い」という状態ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、食品への JAS マークは義務ではありません。ただ、JASマークがあれば「基準以上の品質がある」と国が認めたといえます。機能性表示食品制度とは、トクホなどに関する制度です。流通経路追跡についてはトレーサビリティの内容です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが、農地中間管理機構とは、都道府県の第3セクターです。JAが設立しているわけではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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