問 題
我が国における自然災害等に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.我が国の周辺では,太平洋プレートやフィリピン海プレートが北米プレートやユーラシアプレートの下に沈み込んでいるため,地震活動が活発である。これらのプレート境界で発生する地震のほか,大陸プレート内部の地殼上部で発生する地震もあり,平成28 年に発生した熊本地震は,甚大な被害をもたらした。
2.我が国では,活火山を現在活発な噴気活動のある火山としている。政府は,平成26 年の御嶽山の噴火を教訓に火山対策を見直し,全国110 の活火山を常時観測火山に指定して24 時間体制で監視している。平成28 年には,周辺住民の避難が必要となる噴火警戒レベル5 の噴火警報が浅間山と箱根山に対して出された。
3.台風は,活発な乱層雲を伴う低気圧の渦で,北西太平洋に存在する熱帯低気圧のうち,中心気圧が990 ヘクトパスカル以下のものをいう。夏の後半から秋にかけては,オホーツク海高気圧の南下に伴って台風が我が国の付近を多く通るようになり,平成28 年に発生した台風10 号は,第二次世界大戦以降初めて東北地方に上陸した台風となった。
4.夏には,シベリア高気圧から吹き出す寒気が,黒潮の影響により暖かく湿った空気となり前線付近に流入することで,発達した積乱雲による集中豪雨が多発する。平成27 年に発生した関東・東北豪雨による災害では,地盤の液状化現象により鬼怒川の堤防が決壊し,広範囲の浸水が発生するなど多くの被害が生じた。
5.政府は,地震,山火事等の自然災害に対する予防,復旧対策等の基本的な方針を示す,防災基本計画を定めている。平成27 年には,「防災4.0」未来構想プロジェクトが立ち上げられ,東日本大震災の教訓も踏まえ,官邸における緊急参集チームの設置など政府の初動体制の整備についても,新たに同計画に盛り込まれた。
解 説
選択肢 1 は、妥当な記述です。
選択肢 2 ですが、「全国 110 の活火山のうち、47火山を常時観測火山に指定」です。全てを常時観測しているわけではありません。また、浅間山や箱根山は警戒レベル5の警報は出ていません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが、台風の定義は、低気圧域内の「風速」です。中心気圧ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。H28 年台風 10 号についての記述は、ほぼ正しいのですが、より正確には「太平洋側の東北地方」です。
選択肢 4 ですが、シベリア高気圧からの寒気が暖かくなるとすれば、日本海側の暖流なので、黒潮の影響は明らかに誤りと考えられます。また、「地盤の液状化現象」により鬼怒川の堤防が決壊したわけではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが、初動体制の整備は、既に 2.0 で入っています。1.0 は伊勢湾台風を受けて「災害対策基本法」が制定され、2.0 で阪神・淡路大震災を受けて「政府の初動体制の整備」が盛り込まれ、3.0 で東日本大震災を受けて、初めて「減災」を基本理念として位置づけて、今後を 防災 4.0 としています。
完全に災害を防ぐことは不可能であり、減災をどれだけできるのかが重要であるとした上で、減災においては、公的支援による支援も限界があり、個人の保険・共済による経済的「備え」などをふくめた個人の自助がより一層重要視されています。
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