公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.54解説

 問 題     

大衆社会等に関する理論の記述として最も妥当なのはどれか。

1.J.オルテガ・イ・ガセットは,著書『大衆の反逆』において,第一次世界大戦後のヨーロッパでは,大衆に代わってエリートが主導的な地位を占めるようになったとしてエリート主義を批判し,大衆によるデモなどで社会を変革する必要性を唱えた。

2.E.フロムは,著書『自由論』において,近代人は伝統的権威から解放されていないにもかかわらず,権威から離れて自由を追求しようとした結果,大衆に対する全体主義的な支配が行われたとした。

3.D.リースマンは,著書『孤独な群衆』において,社会的適応の形式の類型として,伝統指向型,内部指向型,他人指向型の3 類型を示し,この中で20 世紀の大衆社会に支配的な類型は他人指向型であるとした。

4.W.W.ロストウは,著書『経済成長の諸段階』において,近代の特徴は持続的な経済成長にあるとして, 3 段階の経済成長段階説を示し,伝統社会,高度大衆消費社会に続いて,環境配慮型消費社会へと移行するとした。

5.A.ネグリとM.ハートは,著書『〈帝国〉』において,ネットワーク状の権力を否定し,国民国家の権力の存在を指摘した。また,多種多様な労働者階級により構成された「ソシオクラート」に新たな民主主義の可能性を見いだした。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
オルテガの「大衆の反逆」は、大衆の危険性を指摘しており「大衆によるデモなどで社会を変革する必要性を唱えた」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
フロムの著書は「自由論」ではなく、「自由からの逃走」です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
リースマンの「孤独な群衆」に関する記述です。

選択肢 4 ですが
ロストウの経済発展段階説では、「伝統的社会→離陸のための先行条件期→離陸期→成熟への前進期→高度大衆消費時代」という5段階の経済成長段階説を示しました。「3段階」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ネグリとハートは、著書「帝国」において、グローバル資本主義の拡大と「それに伴う国民国家の衰退」に根ざした、今日における「帝国」の姿を見極めようとしました。「国民国家の権力の存在を指摘した」わけではありません。また、「ソシオクラート」ではなく「マルチチュード=群衆」が帝国に対抗する主体と述べています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

コメント