公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.52解説

 問 題     

G.H.ミードが論じた「一般化された他者」の概念に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.自分に対する認知や評価を持ち,鏡のように,自己の在り方を映し出す他者のことである。人は,こうした大勢の他者に囲まれながら,常に自問自答を繰り返し,自己完結的に自我を確立していく。

2.認知又は内面化される他者からの社会的期待や規範の総体のことである。人は,幼少期からの他者との相互作用の積み重ねを通じて,他者の自分に対する期待を取り入れて自我を形作っていく。

3.二者間の相互行為において,自己と他者の選択がいずれも相手の選択に依存する,ダブル・コンティンジェンシーの状態における自己に対しての相手方のことである。こうした状態が起こるのは,自己と他者の間で安定的なシンボル体系が共有されていないためである。

4.人の行為を演劇と捉えるドラマトゥルギーの考え方において,観客に相当する他者のうち,自己の行為に反応を示さない他者のことである。人は,その他者にとって魅力的な人間であることを示すために,印象操作によって自己を示そうとする傾向がある。

5.自分自身について語る物語を通して自己が産み出されるという考え方において,自己が物を語る相手方のことである。人は,何らかの価値を帯びた最終地点を目指して,自己の物語を展開していく。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

ミードは、ジンメルと並び相互行為論の源流となった社会学者です。ミードによれば、人間の相互行為の特徴=「自分の言っていることを自分でわかっていること」です。この自己意識は「他人の役割のとりいれ」を通じて形成され、自己のうちに取り入れられた「一般化された他者」が組織化されたセットを「ミー」と呼びました。

選択肢 1 ですが
「鏡のように、自己の在り方を映し出す他者」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。

選択肢 3 ですが
記述はパーソンズのダブルコンティンジェンシーにおける「他我」についてです。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ドラマトゥルギーの考え方は「ゴフマン」によるものです。ミードが論じたわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
自己を自己物語としてとらえる見方についての記述です。ミードによる「一般化された他者」についてではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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