問 題
知能やパーソナリティの検査法に関する記述A〜Dのうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
A.世界で最初の知能検査は,子供を対象として,フランスの心理学者ピアジェ(Piaget, J.)らによって開発された。彼らの知能検査では,様々な問題が難易度の低い順に配列され,どこまで正解できたかによって知能の発達水準が数値化された。この考え方を発展させたのが精神年齢という考え方であり,アメリカの心理学者ターマン(Terman, L.M.)が開発した知能検査では,生活年齢に対する精神年齢の比率に基づいて算出される知能指数(Intelligence Quotient:IQ)が実用化された。
B.一般に,成人では生活年齢を重ねても精神年齢が増加し続けるとは限らないため,生活年齢に対する精神年齢の比率から算出される知能指数は高齢になるほど低く算出される傾向がある。そのため,同じ年齢の集団の中で個人の成績がどの程度かを相対的に位置付ける考え方を取り入れた知能検査が開発されている。例えば,アメリカの心理学者ウェクスラー(Wechsler, D.)が開発した成人用知能検査では,偏差知能指数(偏差IQ)と呼ばれる指標が取り入れられており,後に考案された幼児用や児童用の知能検査でも偏差IQ は用いられている。
C.あらかじめ用意された多数の質問項目に対し,「はい」や「いいえ」などの選択肢や,数段階から成る評定尺度を用いて,回答者に自己評定を行わせるパーソナリティの検査法を作業検査法という。例えば,NEOーPIーR では,パーソナリティ特性として神経症傾向や外向性などの 5 因子(ビッグ・ファイブ)が仮定され,それぞれの因子について複数の質問項目による測定が行われる。作業検査法は実施が容易である反面,結果が回答者の意図や社会的望ましさなどの影響を受けやすいという問題点がある。
D.曖昧な図形や文章を呈示し,それに対する反応や解釈の仕方から,回答者のパーソナリティの特性を明らかにしようとする検査法を,投映法(投影法)という。例えば,ロールシャッハ・テストでは,紙面にインクを落とし,それを紙の中央線で折り畳んで広げた時にできる左右対称の染みの図版10 枚を一定の順序で呈示し,それぞれについて何に見えるかの回答を求める。投映法では,回答者の意図などによって結果に偏りが生じることが少ないという利点がある一方で,検査の実施や結果の解釈には専門家としてかなりの習熟が必要とされる。
1.A,B
2.A,C
3.B,C
4.B,D
5.C,D
解 説
記述 A ですが
世界で最初の知能検査は、アルフレッド・ビネーと、弟子のシモンが開発しました。(参考 法務 H26no6)。ピアジェによって開発されたわけではありません。後半は妥当です。シュテルンが考案した知能指数を、ターマンが知能検査に採用し、実用化されました。記述 A は誤りです。
記述 B は妥当です。
偏差知能指数についての記述です。(参考 法務 H26no6)。
記述 C ですが
前半部分について、あらかじめ用意された多数の質問項目に対し回答していく検査法は「質問紙法」です。作業検査法ではありません。後半部分は妥当です。記述 C は誤りです。
記述 D は妥当です。
ロールシャッハ・テストについての記述です。(参考 法務 H26no12)。
以上より、正解は 4 です。
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