公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.62解説

 問 題     

記憶や思考に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.身の回りで起きた出来事の思い出や,学校や読書などで身に付けた知識など,過去に経験した事柄に関する記憶は,今後の予定など,未来に行う行為に関する記憶と併せて展望記憶と呼ばれている。

2.私たちは,道具の使い方や言葉の意味などの知識を,意識的に思い出そうとすることなく,自分では気付かないうちに想起し,利用している。このような,想起の際に「思い出す」という意識を伴わない記憶をメタ記憶と呼ぶ。

3.道具や材料の常識的な使い方に捕らわれると,それ以外の使い方で活用することが難しくなることがある。このような傾向は反復プライミングと呼ばれ,固定観念によって人間の思考が反復されやすいことを示している。

4.ある問題を解決した経験が,それと類似した新たな問題の解決に役立つことがある。この場合,先に解決した問題と新たな問題との間に類似性を見いだし,前者の解決で得た知識を後者に適用するという,メタファと呼ばれる思考のメカニズムが働いている。

5.私たちは,過去の経験に基づいて知識の枠組みを作り,この枠組みで新たに経験したことの認知や理解,記憶をしている。このような知識の枠組みはスキーマと呼ばれ,ときに認知や理解を歪め,誤った記憶を生じさせるとされている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
展望記憶とは、未来に行うことを意図した行為の記憶を意味します。「帰り掛けに葉書を投函する」といった記憶が例です。身の回りで起きた出来事の思い出は「エピソード記憶」、学校や読書などで身に付けた知識などは「手続き記憶」と呼ばれます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
想起の際に「思い出す」という意識を伴わない記憶は「潜在記憶」です。メタ記憶とは、自己の記憶内容に関する知識です。例としては「自分はパラグアイ料理について学んだことはない」といった知識です。想起の際に「思い出す」という意識を伴わない記憶ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
プライミング効果とは、先行する刺激(プライマー)処理により、後続刺激(ターゲット)の処理が促進または抑制される効果です。反復プライミングは、直接プライミング効果とも呼ばれます。プライマーとターゲットで同じ刺激が繰り返されることによるプライミング効果です。「2回目はすぐわかる」といった効果です。道具や材料の常識的な使い方に捕らわれると、それ以外の使い方で活用することが難しくなるのは「機能的固着」です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
メタファは暗喩・隠喩とも呼ばれる、たとえ・比喩の一種です。比喩であることを明示しない形式であるという特徴があります。「人生は旅だ」が例です。「類似性を見出し、知識を後者に適用する」というメカニズムではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
スキーマについての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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